この連載では、「ダメに見せない説明術」を扱っている。前回は、六つ目のダメ説明である「遅い、ぎりぎり、時間なし」をテーマに取り上げた。10のダメ説明は以下の通りである。
「10のダメ説明」
- 長い、細かい、テンポ悪すぎ
- 論点不明、主旨不明、結論なし
- 抽象的、具体的でない、表面的
- 理由がない、何故?が満載、説明が不足
- 独りよがり、自分視点、自己中心
- 遅い、ぎりぎり、時間なし
- 理解が浅い、内容が陳腐、質問されると沈黙
- 先を読まない、場当たり的、その場しのぎ
- 思想がない、考えがない、自分がない
- 反論する、否定する、対立する
前回は、「遅い、ぎりぎり、時間なし」の説明は上司を怒らせることや、上司や上長に承認を得ることを目的とする説明がなぜ、遅れるのかについて説明した。遅れる原因には次の三つのパターンがある。
上司の承認を目的とした説明がぎりぎりになる三つのパターン
- 時間がなければ上司が仕方なく承認してくれると思っているから、ぎりぎりになる
- 説明相手である上司に何か面倒なことを言われるのか怖くてなかなか説明にいけないから、ぎりぎりになる
- 考え過ぎて、準備しすぎて時間がなくなるから、ぎりぎりになる
では、どうしたら遅れないようにできるのか。それは、上司や上長とよくコミュニケーションを取り、報告・連絡・相談を密に行うことを前提とし、以下のステップで説明を行うことが必要であることも説明した。
上司に承認をもらう説明のステップ
- 最初にどのような案件か概略を上司に説明し、上司が気にすることなどを確認
- 時間の制約について合意し、重要なものに絞って上司の指示した内容を調査
- 調査内容の報告
- 3を踏まえた、説明資料の体裁、記載内容、レベルの合意
- 資料作成
- 上司への説明、チェックとさらなる指摘
- 修正して決裁
なお、前回の連載記事にも大変多くのアクセスを頂いたのだが、その中のコメントに「上司や上長と説明におけるコミュニケーションが取れない場合はどうするのか」というものがあった。
要は、上司や上長にいくら事前説明をしても、彼・彼女らは都合が悪くなれば「聞いていない」「知らない」と平気で言うから、いくら事前説明したところで意味が無いというご意見である。確かにそういう上司や上長もいるだろう。筆者もそういう状況に何回も陥ったことがある。
しかし、だからと言って事前説明の全てが意味の無いことにはならないはずだ。「承認を前提とする説明」の肝は先ほど説明した七つのステップである。これらを身に付けた上で、「聞いていない」「知らない」と言う「逃げ腰体質」の上司、上長についての対処能力を身に付けるべきである。前置きが長くなったが、今回も「遅い、ぎりぎり、時間なし」をテーマとする。