2月5日・6日の両日、「都道府県CIOフォーラム」の第10回春季会合が東京・目黒で開催された。同フォーラムは、全国47都道府県の情報化統括責任者(CIO)または情報化推進担当責任者(CIO補佐官、情報政策課長など)がメンバーとなり、日経BPガバメントテクノロジーが事務局として企画・運営に携わっている。2003年の設立から年2回のペースで全体会合を重ね、今回で20回目を迎えた。

 今会合では、2012年8月に初代の政府CIOに就任した遠藤紘一氏を基調講演に招き、意見交換を行った。都道府県のほぼすべての情報政策推進責任者が、政府CIOと一堂に会して議論する初の機会となった。

写真●東京都内で行われた都道府県CIOフォーラムの様子
(撮影:中村 宏)
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 基調講演に続く議論のテーマとしては、経済産業省など一部政府機関で試行的な取り組みが始まったオープンデータについて自治体での展開方針をどのように考えるか、利用者が急増しているスマートフォンやタブレット端末などを庁内事務にどのように活用すべきか、官公庁を狙った標的型攻撃が増える中で組織として情報セキュリティをどのようにして高めていけばよいかを取り上げた。

 議論の詳細は、「日経BPガバメントテクノロジー 2013年春号」(日経コンピュータ誌 4月4日号のBook-in-Bookとして発行)や「ITpro 電子行政」サイトに順次掲載するが、ここでは会合初日のトピックの一部を紹介する。

政府はつぶれないと思っている?

 基調講演に登壇した遠藤政府CIOは、「今後の電子行政推進の方針」を説明。IT活用による行政の構造改革が2006年ころから停滞しているとの認識を示し、「民間では朝令暮改は当たり前。変わらないと生き残れない。政府は(変わらなくても)つぶれないと思っているのではないか」と危機感をあらわにした。

 現在の電子行政が抱える課題としては、行政サービスの利用者である国民や行政窓口の担当者の苦労など現場の声を理解していない、縦割りの組織・システムにより府省同士、府省-自治体間、自治体同士で重複があったり連携できていなかったりすることなどを、民間での経験・視点を基に指摘。都道府県が共通基盤システムを構築するアイデアについては、効率化のために応援していきたいとの意向を示した。

 また、政府内にIT活用や業務改革の専門家が不足している問題も指摘。「改革とは、従来手とペンでやっていたことをやめられないか、(途中の過程を飛ばす)中抜きはできないか、できなかったことができるようにならないかを考えること」と述べ、「民間企業にいたとき、アウトソーシングは大嫌いだった」と明かした。「今やっているのと同じことを事業者に委託しても、何も残らない。(アウトソーシングによって)業務内容を高め、浮いたリソースを別の案件に向けていくべき」とした。

 安倍晋三首相、山本一太IT政策担当大臣とは、「復興や経済再生などの課題を前向きに動かすためにITはいろいろな形で役立つとの認識で一致している」と述べ、2012年末の政権交代後も政府との関係に変化がないことを示唆。当初の政府計画から1年遅れになりそうなマイナンバー制度(社会保障と税に関わる番号制度)については、行政の仕事のやり方をどのように変えられるのか、国民・省庁・自治体にとってのメリットが何かについて議論がまだ不十分との認識を示し、「きちんと準備してからやろう」と語った。