新規事業のネタは、どこに転がっているか分からない。先日、「こんなビジネスがあるのか」と、驚いた話があった。中国での話だ。

 一人っ子政策が続く中国では、たった1人のかわいい我が子のために、最高の教育を提供したいと考える両親が非常に多いという。中国で急増している富裕層の家庭では、子供が生まれると英才教育を施すことを考える。

 向かう先は、その名もズバリ「〇〇天才幼稚園」や「××小博士幼稚園」。

写真●高級幼稚園で開いたイベントの様子
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 日本人にも意味が分かる、“直球”の施設名が付いた、英才教育を売り物にする幼稚園である。これらは、一般に「高級幼稚園」と呼ばれている。もはや、幼稚園というよりは学校に近い存在だそうで、朝から晩まで園児のためにしっかりと学習カリキュラムが組まれている。中国の物価水準を考えると、月謝は日本の私立幼稚園の2倍近い高料金になるという。

 こうした幼稚園に子供を通わせる両親やその祖父母たちは、企業にとって重要なマーケティングのターゲットになり得る。いわゆる6ポケットだ。学習教材はもちろんのこと、子供服や食品、家電、さらには金融商品まで、販売チャンスは大きいだろう。

 こうした中国の高級幼稚園を、ネットワーク化しようとする会社が登場した。しかも中国企業ではない。日本に本社がある、中国BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の老舗、インフォデリバである(関連記事:「ミミズ文字」の誤入力率が0.0094%/太陽生命保険)。

 同社は中国BPOで約120社の顧客企業を抱えるが、BPOに次ぐ新しい柱として「中国ビジネス開発事業」を掲げており、高級幼稚園のネットワーク化に本腰を入れている。12人の専任チームまで作り、幼稚園チャネルを本気で開拓している。

5000カ所の高級幼稚園を既に組織化

 インフォデリバが、高級幼稚園のネットワーク化に着手したのは2006年。2013年2月現在で、組織化できた中国の高級幼稚園の数は、実に5000カ所を超えている。これだけでも驚きである。

 ちなみに、幼稚園は中国全土に約14万カ所あるそうで、そのうちインフォデリバがネットワーク化したい中高所得層が子供を通わせる高級幼稚園は、沿岸部の大都市を中心に公立と私立を合わせて1万カ所ほどある。つまり、インフォデリバは既にその半数を組織化できている計算になる。

 世帯数にして100万。子供は原則一人っ子だから、「世帯数=子供の数」と考えて差し支えないそうだ。

 高級幼稚園ネットワークは、中国進出を狙う日本企業にとって興味の的だ。インフォデリバの伊藤嘉邦副社長は、高級幼稚園という中国でのダイレクトチャネルのメリットは大きく3つあると説明する。

(1)中国の中高所得層に直接アプローチできる
(2)社会に信頼された幼稚園の先生に協力してもらえる
(3)幼稚園に通う3年間に園児に繰り返し接触できる

 (1)は当然として、見逃せないのが(2)と(3)だ。中国でも過熱しているお受験戦争の入口となる幼稚園は、中国人にとって非常に大事な場所だ。必然的にそこで働く幼稚園の先生は「(日本人の感覚以上に)社会的ステータスが高く、周囲から尊敬される存在であることが多い」(伊藤副社長)。