社会や企業におけるITシステムの重要性が高まっていることもあって、やりがいは増し、活気に満ちあふれていてもおかしくないITプロフェッショナルのお仕事。ところが実態はそうでもなさそうだ。

 「IT業界の方から、うちの会社の組織風土改革もお手伝いいただけないか、とお声掛けいただく機会が増えた」。日経情報ストラテジーで人気のコラムニストであり、組織風土改革の第一人者であるスコラ・コンサルトの柴田昌治氏は、こう打ち明ける(関連記事:悲鳴を上げるIT業界から組織風土改革の依頼が急増中)。

 国内のIT投資がさほど伸びない状況にあり、受注合戦は激化する一方だ。顧客企業から突きつけられる厳しい納期や予算に対応するため、システム開発の現場はつらい仕事を強いられている。

 企業経営の強化にITの利活用が不可欠とされる時代。ITプロフェッショナルの活躍の場は広がることは間違いないにもかかわらず、システムの仕事は「3K(きつい、帰れない、給料が安い)」職場と言われることも多く、「優秀な人材を集めることが難しい」と嘆くIT企業幹部が相変わらず多数存在する。

 「システム子会社問題」も15年以上前から、その構造が変わっていないようだ。親会社から降ってくる仕事に依存し、受け身体質が抜け切れず、「自立」できないでいるシステム子会社は以前として多い。親会社の業績が厳しさを増し、外販(グループ企業以外からの仕事を請け負うこと)の比率を高めるように求められても、体質を改善できないでもがいているわけだ。

 親会社の意向を、右から左へと伝えるだけのシステム子会社のトップもいるだろう。「外販比率を高めるため、外に出て仕事を取って来い」。こう現場にハッパをかけるだけで、営業力が向上するほど現実は甘くない。現場が混乱するだけだ。

 営業力を高める以前に、自社の得意分野を明確にし、会社として目指す姿を提示できなければ、現場は戸惑うだけである。

成長には組織風土改革が待ったなし

 「顧客企業の言いなりにはならず、ITソリューションという価値を提供する問題解決型企業に変わる」。システム子会社に限らず、IT企業のほとんどのトップが、以前からこう公言する。

 だが、掛け声だけで終わり、実際に変身できていないIT企業が多いのではないか。釈迦に説法になるが、ITはスマートフォンやタブレット端末、クラウドコンピューティングに、ビッグデータと劇的な進化を遂げている。それとは対照的に、システム開発の職場の雰囲気は、進化どころか「悪化」しているのかもしれない。

 「顧客企業に役立つITソリューションを提供するには、小手先の改善では限界がある。抜本的な組織風土改革に取り組むべき時が来た」。内心ではこうした思いを持ちながら、悶々と日々の仕事をこなしているITプロフェッショナルは少なくないのではないだろうか。

 ITソリューションを構成するのは、心のないハードウエアやソフトウエアである。だが顧客企業にとって有益なITソリューションを提供できるかどうかを左右するのは、ITプロフェッショナルという人間にほかならない。

 いかに多くのITプロフェッショナルに、最大限のパフォーマンスを発揮してもらうか。それを支える職場環境が整っているかどうかは、IT企業の競争力はもちろん、IT活用で成長を目指す顧客企業にも多大な影響を及ぼす。