この連載では、「ダメに見せない説明術」を扱っている。前回は、五つ目のダメ説明である「独りよがり、自分視点、自己中心」をテーマに取り上げた。10のダメ説明は以下の通りである。

「10のダメ説明」

  1. 長い、細かい、テンポ悪すぎ
  2. 論点不明、主旨不明、結論なし
  3. 抽象的、具体的でない、表面的
  4. 理由がない、何故?が満載、説明が不足
  5. 独りよがり、自分視点、自己中心
  6. 遅い、ぎりぎり、時間なし
  7. 理解が浅い、内容が陳腐、質問されると沈黙
  8. 先を読まない、場当たり的、その場しのぎ
  9. 思想がない、考えがない、自分がない
  10. 反論する、否定する、対立する

 前回、「独りよがり、自分視点、自己中心」の説明は、説明者の頭の中が他人視点(説明する相手の視点)になっていないことが原因であると説明した。「頭の中=他人視点」の説明とは、簡単に言うと、説明相手が望んでいる内容を把握し、それを説明することだ。

 他人視点(相手視点)の説明をしないと「相手にとっての説明の価値」は非常に低くなる。特に上司、上長といった意思決定者は、高度な判断をする業務特性を持つので、その傾向が強い。

 上司、上長は「自分に必要なこと」と、「そうでないこと」を絶えず取捨選択しながら説明を受けている。だから、自分の知りたいことを外した説明を嫌う傾向がある。だが、多くの人は、自分の説明したいことを一方的に説明する。これが、上司、上長向けの説明を苦手とする人が多い理由だと筆者は考えている。

 これを具体的に説明するために前回、「ある会社の石井という部下が説明で失敗し、評価を下げてしまった事例」を紹介した。事例に登場する石井は、上司である山口課長との関係が悪かった。山口課長が石井の説明にいつもダメ出しして、石井がそのことを不満に感じていたからだ。

 課長補佐の黒田にアドバイスされても、石井はそれを聞き入れず、結果的に説明スキルを見直すことはなかった。このため、最後は異動することになった。この話は非常に後味が悪いが、実は後日談がある。異動した石井はその後どうなったか。これを紹介したい。今回のテーマも、五つ目の「独りよがり、自分視点、自己中心」である。