以前筆者は「“モバイルファースト”で起こること」というタイトルを付けた記者の眼を執筆した。その際、「”モバイルファースト”で起こること---。それはパソコンの原点回帰、プログラミングやデザインのための道具に戻ることではないかと筆者は思う」と記事を締めくくった。
当時スマートフォン/タブレットはコンテンツを創り出す道具、すなわちコンテンツ・クリエイション・デバイスではなく、コンテンツを消費=閲覧・視聴するための道具、つまりコンテンツ・コンサンプション・デバイスであるという意識が強かったからだ。
だが、あれから1年半。この認識は短絡的過ぎたと思っている。もちろん、スマートフォン/タブレットがパソコンと同じレベルのことができるコンテンツ・クリエイション・デバイスであるとは思っていない。
一方で、単なるコンテンツ・コンサンプション・デバイスであるとも思っていない。スマートフォン/タブレットは、新しいコンテンツ(ここでは広くビジネスモデルやサービスなども含めてこう表現する)を創るための“素”を提供する“コンテンツ・ソース・デバイス”と考えるようになった。
当初、“コンテンツ・シーズ・デバイス”という言葉が思い浮かんだが、「ニーズ」と「シーズ」という対になるマーケティング用語の意味で捉えられる恐れがあるので、“コンテンツ・ソース・デバイス”と表現した。いずれにせよ、そうしたことを「UX/UI」サイトに掲載予定の特集記事の取材を通して、改めて実感した。
コンテンツの素を生むスマホ/タブレット
スマートフォン/タブレットは、単にパソコンの一部機能や携帯電話を代替する機器というだけでなく、各種入力デバイスを代替する存在になりつつある。今後は周辺デバイスと連携する際の中核の役割をも担おうとするまでになっている(関連記事)。
入力デバイスの代替という点で、最も分かりやすい例がデジタルカメラ機能だ。「タブレットが入力デバイス?」と訝る向きもあろうが、海外のイベントなどでは画角10インチクラスのタブレットで写真を撮っている人を結構見かける。実際、被写体のモニターとしては大画面の方が見やすいこともあり、今後タブレットのカメラ機能はもっと重視されていきそうだ。
少し話題がそれたが、スマートフォン/タブレットは、単に写真を撮影してアルバムに保存するだけでなく、それらを外部に公開したり、ちょっとした加工を施したりといったことが圧倒的にやりやすい。そうしたアプリやサービスが続々と登場している。
クラウドサービスやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に投稿するといった一連の動作がスムーズにできるため、好むと好まざるとにかかわらず、第三者、それも一般の人が撮影した写真を目にする機会が圧倒的に増えたという方は多いのではないだろうか。