この連載では、「ダメに見せない説明術」を扱っている。前回までは、四つ目のダメ説明である「理由がない、何故?が満載、説明が不足」をテーマに取り上げた。10のダメ説明は以下の通りである。

「10のダメ説明」

  1. 長い、細かい、テンポ悪すぎ
  2. 論点不明、主旨不明、結論なし
  3. 抽象的、具体的でない、表面的
  4. 理由がない、何故?が満載、説明が不足
  5. 独りよがり、自分視点、自己中心
  6. 遅い、ぎりぎり、時間なし
  7. 理解が浅い、内容が陳腐、質問されると沈黙
  8. 先を読まない、場当たり的、その場しのぎ
  9. 思想がない、考えがない、自分がない
  10. 反論する、否定する、対立する

 今回から、五つ目の「独りよがり、自分視点、自己中心」をテーマとする。

「独りよがり、自分視点、自己中心」の説明が「自分をダメにする」

 筆者が体系化している説明術において、説明が「独りよがり、自分視点、自己中心」とは、説明の本質である「相手に確実に伝えて、行動してもらう」ことを忘れ、「自分の説明したいことを自分が満足できるレベルで説明する」という状況を指す。

 つまり「相手に伝えて、相手が理解して行動すること」をゴールとした説明ではなく、「自分が一方的に話をして、それで満足する」ことをゴールとするものである。この両者の違いを理解しないと、ビジネスで成果を出せる説明はできないので注意してほしい。

 この連載でも何回か説明しているが、説明には二つの機能がある。一つは「他人に正しく伝える」という機能、もう一つは、「他人から能力を評価される試験」機能である。「独りよがり、自分視点、自己中心」の説明は、二つ目の「能力評価試験」の観点でかなり不利になるので注意する必要がある。

 筆者は、今まで20年以上に渡って多くの仕事を担当してきたが、その中で最も重要と思ってスキルの向上に取り組んできたことがある。それが、この連載のテーマである「説明」だ。企業や団体では集団でビジネスに取り組むことがほとんどだから、他人、特に上司や上長に正しく簡潔に本質を伝えることが重要になる。

 筆者が一緒に仕事をしてきた社内の人や、社外の人で「優秀だ、仕事ができる」と思った人は皆説明が上手だった。もしかしたら、筆者が知らない人で本当は優秀な人がいたのかも知れないが、筆者にはそれは分からない。

 なぜなら、それらの人は筆者にうまく説明してくれなかったからだ。あたりまえの話だが、「いくら優秀でもそれを他人に伝えられなければ、他人には分からない」のだ。「1.優秀」であり、「2.それを他人に伝えることができる能力」の二つがあってこそ、人はその人を高く評価する。

 本当は優秀かもしれないが、説明がダメで、他人に「あいつの言っていることはよく分からない」とか「彼は質問をするといつもしどろもどろになるね」と言われてしまう人は評価されないのである。これが、筆者が「説明には能力評価機能がある」と言う理由である。