2012年12月14日金曜日、筆者のプロジェクトの忘年会を東京ソラマチで行った。時期が時期だけに30階、31階のレストランフロアへのエレベーター前には長い行列ができていた。

写真1●なかなか美味だったイタリアワイン「パイアラ ロッソ」
写真1●なかなか美味だったイタリアワイン「パイアラ ロッソ」
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 Oさんが予約してくれた31階の店はスカイツリーを眼の前にする席で、その場所だけが中二階のように階段で登る構造になっていた。他の客の声も視線もなく、くつろげた。料理も良かったが、初めて飲んだ「パイアラ ロッソ」というイタリアワイン(写真1)がまろやかで美味だった。おかげで杯も進み、会話もはずんだ。

 ちょっと古い話になるが、10月に筆者の属する事業部の下期キックオフが行われた。筆者の2人前にスピーチした人が面白いことを言った。「松田さんはプロジェクトマネジメントはトラブルを予防するためにするものだと言うが、たくさんプロジェクトをやっているとトラブルも起こる。トラブルを後悔しても先には立たないが、役には立つ」。

 後悔先に立たず、でも役に立つというのだ。こういう言葉遊び的表現は好きだ。久しぶりにプロマネについて書こうと思う。

「反省」がチェック能力を高める

 面白い表現ではあるのだが、「後悔」という言葉の使い方は適当ではない。後悔は文字通り、トラブルを起こしたことを後になって悔やむことだ。悔やむのは感情の働きであり、どんなに悔やんでも前向きなものは出てこない。必要なのは後悔ではなく「反省」である。反省は感情ではなく理性の働きで、自分のよくなかった点を認めて改めることだ。

 「後悔は先には立たないが役には立つ」と言った人が言いたいことは「トラブルの原因を明確にし、同様のトラブルを繰り返さないようにする」ということだろう。ここで注意すべきは原因には直接的原因と根本原因とがあり、根本原因まで明らかにしないと再発は防止できないということだ。つまり、「反省」したことにならないのだ。

 例えば、あるプロジェクトで受注時点の予算を大幅に超えて赤字を出したとする。原因は受注時のお客様との仕様確認が不十分だったため、予定を大幅に超える工数がかかったからだ。今度からはお客様との仕様確認をちゃんとやろう、では再発防止にならない。そもそも、受注前のお客様に対する仕様や見積もり条件の説明・記述は十分だったのか。お客様への説明や交渉をした人が力不足ではなかったか。お客様に仕様確認を証跡の残る形でやっていたか。なぜプロマネは予算超過するまで問題に気づかなかったのか。

 このように根本原因の探索をして特定しないと、有効な再発防止策はできない。トラブルなど起こさないに越したことはないのだが、その経験と反省がプロマネのチェック能力を高めるのは間違いない。チェック能力が高くなれば予防ができる。