この記事が公開されるころには、総選挙の大勢が判明しているかもしれない。どこかの党が衆議院で過半数を制したとしても参議院との“ねじれ”が解消しにくい状況であることから、新政権は何らかの形で連立政権になるのは間違いないだろう。

 年内に船出する新政権には、緊急の課題が数多く待ち受ける。2013年度予算の編成をはじめ、景気/円高対策、復興推進、社会保障費財源、原発/エネルギー問題、国家安全保障、TPP(環太平洋経済連携協定)対応など、高波が幾重にも押し寄せる。前・通常国会の終盤から解散・総選挙をめぐる与野党間の攻防によって法案審議がこう着しただけでなく、行政組織も政権交代の可能性をにらんで政策の推進スピードが鈍っていた。新政権は、こうした遅れを取り戻し、さらにスピードを上げて政策課題の解決に取り組まなければならない。

 新政権がどのような形になろうとも、政策課題の解決の推進、スピードアップや効率化には、ITの一層の活用がカギを握る。少し気が早いかもしれないが、新政権の今後の取り組み状況を逐次チェックしていくためにも、IT活用に関連した政策面の課題を整理しておきたい。

政府CIOの制度化

 2012年8月に初の政府CIO(情報化統括責任者)として、リコージャパン顧問であり経団連の電子行政推進委員会電子行政推進部会長などを務めた遠藤紘一氏が就任した。政府CIOは電子行政推進の司令塔となり、政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)が2011年8月に決定した「電子行政推進に関する基本方針」に掲げられた戦略の企画・立案・推進や、政府全体のIT投資の管理といった役割を担う。

 だが、極めて重要なポジションでありながら、いまだ政府CIOの法的な根拠はない。任命当時、政府は具体的な役割や権限を定める法案を2013年の通常国会へ提出するとし、それまではIT戦略本部と行政改革実行本部の下に置かれた「政府情報システム刷新有識者会議」が決定した「政府情報システム刷新のための共通方針(提言)」に沿って活動することになるとした。

 同様の機能を持ちながら府省ごとにばらばらに実施されるシステム構築や、要件定義が不十分なままの調達に起因する稼働遅れなど、政府のIT投資については批判が少なくない。また行政手続きの電子化の推進政策では、手続きの電子化率の引き上げが目的化してしまい、ほとんど使われない電子手続きを数多く生み出したとの批判や反省もある。

 電子行政の推進や行政分野での効率的なIT活用の推進には、府省庁に対し横断的な権限を持った政府CIO組織によるガバナンスが不可欠といえる。新政権下で一刻も早い制度化が求められる。