2012年12月16日の第46回衆議院議員総選挙の投票日まで、あと数日と迫った。今回の選挙で主な争点となっているのは、エネルギー、医療・年金・子育て、外交・安全保障・TPPなどであり、残念ながら記者がカバーする情報通信分野の話題は少ない。もともとICT分野は「教育や社会保障などの分野と比べて票につながりにくい」(ある議員)こともあり、選挙時の争点になりにくいのが事実だ。

 しかしICTは、あらゆる産業や社会を支える技術であり、国民の生活にじわじわと広く影響を与える。マニフェストの隅に書かれた政策が、金科玉条となり重要な意思決定の根拠となるケースもある。今回の選挙で選ばれる衆議院議員、与党が、今後数年間の国としての意思決定を進める以上、ICT視点でも政党による主張の違いを押さえておきたい。特に任期中の2014年から2015年にかけて、情報通信分野では、「光の道」構想の進捗状況のレビュー、モバイルトラフィック増大によるさらなる周波数帯の割り当てなど、重要な意思決定の場面が訪れると考えられる。

 そこで今回は各政党のマニフェストから情報通信分野の項目をピックアップし、各政党の違いを明らかにしてみたい。そして最後にこれまでの民主党政権の3年間を振り返り、現在の情報通信分野が直面する課題も指摘したい。

ICT分野の主な争点はマイナンバー、周波数オークションなど

表1●第46回衆議院議員総選挙における各政党の情報通信分野のマニフェスト
表1●第46回衆議院議員総選挙における各政党の情報通信分野のマニフェスト
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 表1に、各政党のマニフェスト(公約)から、情報通信分野に関連する主な政策を拾い出してみた。情報通信に関連する項目は、民主党や自民党、公明党、社民党、共産党など古くから存在する政党のほうが充実している傾向にある。逆に今回の選挙直前に誕生した多くの新党は、エネルギー分野や社会保障分野に重点を置いており、ICTに関連した項目をまったく打ち出していない政党も目立つ。これは“票につながりにくいICT分野”に力を入れるほど新党はリソースが十分ではないという理由からだろう。そんな中、比較的新しい政党の中では、みんなの党のマニフェストでのICT分野の充実ぶりが目立つ。

 ピックアップした各政党のマニフェストにおける情報通信政策の主なポイントは、(1)スマートメーターなどの活用による電力改革、(2)共通番号制度(マイナンバー)、(3)周波数オークション、(4)インターネット選挙の解禁、だろう。

 まず(1)の電力改革は、政権与党である民主党が、現在の政策の延長として、引き続き、発送電分離や電力小売り自由化、スマートメーターの普及などを進めるとしている。公明党も、電気使用量の「見える化」を進めると主張、日本維新の会、みんなの党なども電力市場の自由化に積極的な立場だ。逆に自民党はマニフェストのエネルギー分野では、踏み込んだ発言をしていない。