多くのネットワーク管理者が恐れるのはネットワークが「つながらなくなる」こと。トラブルの原因は様々だが、日経NETWORKが毎年実施しているアンケートでは、「機器(ハードウエア)の故障」によるものがかなり多い。そこで、「ネットワーク機器は何が原因で壊れるのか?」をテーマにした特集を企画し、複数の機器ベンダーに取材した。
製造不良や経年劣化を除くと、故障原因として多いのは「温度」「雷」「水」「衝撃」だという。その詳細な説明を聞いて「なるほど」と思うことばかりだったが、それ以上に興味深かったのは、故障を防ぐために機器ベンダーなどが凝らした工夫の数々だ。その中から、特に印象に残った3つを紹介したい。
(1)温度管理の徹底で保証を延長
アラクサラネットワークスはユニークなサポートサービスを提供している。それは、機器の動作環境条件の上限温度より10度下げて運用すれば、メーカー保証を6年から最長10年に延長するというもの。同社では「ロングライフソリューション」というサービス名で提供している。
機器の故障には設置環境の「温度」が大いに影響する。高温になると機器内部の電解コンデンサーの寿命が縮み、早く壊れやすくなるためだ。裏を返せば、故障を防ぐには周囲の温度を下げればよい。一般に電解コンデンサーの寿命は、温度が10度下がると2倍に伸びるといわれる。これに照らすと、同社のサポートサービスは理にかなっている。
(2)きょう体のデザインを工夫
故障を防ぐため、ネットワーク機器のきょう体(ケース)のデザインを工夫した例もある。富士通の企業向けアクセスルーター「Si-Rシリーズ」は、一部の機種できょう体の上部に丸みを持たせたデザインを採用している(写真1)。
小型のネットワーク機器は、設置スペースの関係で重ね置きされてしまうことがある。これにより機器の温度が上昇すると、故障しやすくなってしまう。そこで同社は、きょう体の上部に丸みを持たせて、積み重ねられないようにデザインしたという。
もう一つ、落下による衝撃に耐えるためにデザインを工夫した例もある。ヤマハのアクセスルーター「NVR500」は、縦置きにしたときに、きょう体の上下部分が少し出っ張るデザインになっている(写真2)。
これは、机などから落下したときに電源コネクターの周囲を守るための工夫だ。同社によると、古い機種ではケーブルなどに足を引っ掛けてルーターが落下したときに、電源コネクターの周囲の基板が割れて故障するケースが多かったという。そこでこの出っ張りを設けたところ、以前のような電源周りの基板割れによる故障はなくなったそうだ。
(3)ラックへの収め方
これは機器ベンダーの工夫ではなく、データセンターを運用する事業者の工夫だ。さくらインターネットでは、熱対策としてネットワーク機器をラックに詰め込みすぎないという工夫をしている(写真3)。
ラックにある黒いパネルはケーブル管理用のアクセサリーで、ここにネットワーク機器は入っていない。だいたいネットワーク機器2~3台ごとに空きスペースを作っているという。発熱量の大きいサーバーでは珍しくない収納方法だが、ネットワーク機器も同様に扱えば故障の予防になる。
機器メーカーは様々な工夫で故障を防ごうとしている。ただし故障を防げるかどうかは、ユーザーの使い方によるところが大きい。ネットワーク機器の設置環境などについては、取り扱い説明書に細かく書いてある。普段はあまり読むことがないかもしれないが、これを機に読んでみてはどうだろうか。