今から1年ほど前、米セールスフォース・ドットコムのイベント「Dreamforce 2011」の講演で、米グーグルのエリック・シュミット会長はこんなことを述べていた。「エンタープライズの世界でも消費者の世界と同じことが起こると思う。使い勝手がよくて簡単なものはあっという間に広がる。もちろん中では複雑な処理が行われているがそれは表には見せない」。

 この発言は、「コンシューマに受け入れられるサービスや製品は複雑さが表に出ていない」といった話の続きとして述べられたものだが(関連記事:「PCの次の時代が来た」、グーグル シュミット会長がセールスフォース ベニオフCEOと対談)、まさにそんなことをつい最近の取材で感じた。

 一言でかたずければ、「コンシューマライゼーションが進む」ということだが、取材で感じたのは、単にコンシューマに受け入れられた製品や技術が業務システムに採用されるといったことだけではない。業務システムを提供する企業の在り方そのものに、“コンシューマライゼーション”とも言える変化が起こりつつあると感じたのだ。

 具体的には次のようなことだ。共通のプラットフォームを背景として、以前はシステムインテグレータが担っていた領域に起業の余地が生まれ、コンシューマ系ITサービスの展開と同じようなプロセスでベンチャー企業が登場。そして例えばFacebookを軸にした各種サードパーティ製アプリ/サービスのエコシステムのごとく、同一プラットフォームの上でサービスを展開する企業同士のエコシステムが広がっていく――。

SOAでやりたかったことをWebサービスで実証

 2012年10月16日に機能連携を発表したチームスピリット(旧社名はデジタルコースト)と日本技芸の事例は、まさにこうしたエンタープライズ分野の新たな動きとして捉えられると筆者は考えている(関連記事1:Force.comで業務アプリをマッシュアップ、「チームスピリット」と「rakumo」が機能連携、関連記事2:Force.comが業務システムの“作り”を変える、アプリベンダーのエコシステムを後押し )。

 機能連携はユーザーから見るととてもシンプルだ。チームスピリットが提供する勤怠管理/プロジェクト工数管理などの機能を備える人材管理サービス「チームスピリット」と、日本技芸が提供するスケジュール管理サービス「rakumo ソーシャルスケジューラー」をシームレスに扱えるというもの。例えば、それまで同じ内容のデータでありながら、システムが別々だったため2回入力していた手間が、1回の入力で済むといったことがユーザーのメリットになる。

 「そんなのとうの昔に実現できている」という企業ももちろん多いだろうが、ここでのポイントは、こうした連携がサードパーティー製のサービス同士で簡単にできてしまうことだ。

 セールスフォースのCRMである「Sales Cloud 2」はもちろんのこと、チームスピリットや日本技芸以外の企業が提供するサービスだろうが、ユーザー企業の情報システム部門が開発したカスタムアプリだろうが、「Force.comネイティブで作っていれば、お互いオブジェクトの情報を取りにいくといった形で、数日レベルで連携機能を開発できる」(日本技芸 代表取締役社長の御手洗大祐氏)という。

 まさに「業務システムについて、昔SOA(Service-Oriented Architecture)でやりたかったことを、WebサービスAPIでうまく実現できることを実証」(同氏)したのだ。