「ネットワークのトラブルには傾向があるのだろうか?」。今、11月下旬に発行予定のネットワークトラブル解決をテーマにしたムックの編集作業をしていて、この点が気になった。

 筆者が所属する「日経NETWORK」の注力分野の一つは、ネットワークのトラブルシューティングに関するノウハウ提供である。年に1回、Webのユーザー企業アンケートを実施し、トラブルの内容や解決までに要した時間などを質問。その設問に回答し取材を許可してくれたユーザー企業に、トラブルが発生してから原因を見つけ出し解決するまでの経緯を聞き、「トラブルからの脱出」という事例コラムにまとめている。今回はトラブルの傾向を探るため、同コラムで紹介したトラブルの内容とアンケートの結果を分析してみた。

 「トラブルからの脱出」では、記者がアンケートの集計結果や自由記入欄を見て、「このケースは読者に役立つノウハウを提供できるのではないか」と思った回答をピックアップし、取材を依頼している。誌面に掲載されたトラブルの内容を整理すると、最多だったのは「機器の故障」が原因だったものだ(表1の赤字部分)。2010年1月号~2012年10月号の34号分で10例に及ぶ(うち1つは、原因として2台の機器の故障が挙げられていた)。ただしこの結果は、“記者の選択”という行為が入るため、全体の傾向を示すものではない。

表●日経NETWORK「トラブルからの脱出」で紹介したトラブルの原因
機器の故障が原因となっているものを赤字で示した。
掲載号 原因1 原因2
2010年1月号 LANスイッチの故障  
2010年2月号 仮想マシンのIPアドレスが重複  
2010年3月号 メールサーバーのOS変更 迷惑メール対策技術が正規のメールを受信拒否
2010年4月号 LAN内でIPアドレスが重複  
2010年5月号 DHCPサーバーの動作の不具合  
2010年6月号 LAN内でIPアドレスが重複  
2010年7月号 LANスイッチの故障  
2010年8月号 LANスイッチの故障 LANスイッチをループ接続
2010年9月号 サーバー上のソフトに脆弱性 不正アクセス遮断措置が不十分
2010年10月号 サーバー機の故障 ONUの動作の不具合
2010年11月号 サーバー機の故障 LANケーブルの挿し間違い
2010年12月号 WAN回線の帯域不足 リピーターハブの動作異常
2011年1月号 ADSL用スプリッターの故障  
2011年2月号 DHCPサーバー機の動作の不具合  
2011年3月号 FTTH回線の障害  
2011年4月号 迷惑メール対策サービスの障害  
2011年5月号 迷惑メール対策装置の性能不足  
2011年6月号 パソコンとサーバーの時刻同期にずれ  
2011年7月号 正規のものではないDHCPサーバーが稼働
2011年8月号 VPNルーターの接続先設定が違う  
2011年9月号 IPv6トンネル接続サービスの障害  
2011年10月号 ファイアウォールのポート設定が不十分  
2011年11月号 ルーターのコンフィグ(設定情報)が一部消滅  
2011年12月号 クライアントOSの動作の不具合  
2012年1月号 DHCPサーバーに設定する数値が不十分  
2012年2月号 ファイアウォールのポート設定が不十分  
2012年3月号 メールサーバー機の搭載機能が自社に合わない  
2012年4月号 LANスイッチの故障 ファイアウォール装置の故障
2012年5月号* 無線LANアクセスポイントの故障 IPアドレスの重複
2012年6月号 LANスイッチをループ接続 LANスイッチの故障
2012年7月号 LANスイッチをループ接続 LANスイッチの故障
2012年8月号 マルチキャスト通信による無線LANの帯域圧迫  
2012年9月号 マルウエアによる大量通信  
2012年10月号 計画停電でスイッチの設定が一部消滅  
*2012年5月号の事例では、「パソコンの経路情報に間違い」という原因もあった