「Don't be evil.」(邪悪にならない)は米Googleが掲げる有名なスローガンだが、それだけでは足りない時代を迎えつつあると感じたので、この場を借りて共有したい。データサイエンティストを対象にした「Doing Good with Data」(データを使って良いことをしよう)という講演を聞き、ビッグデータ分析で得られるITの威力をこれまで以上に意識して利活用する必要があると改めて認識したのがきっかけだ。

 2012年10月21~25日(現地時間)、米国ワシントンD.C.市内のホテルにてデータウエアハウスに関するカンファレンス「Teradata PARTNERS Conference & Expo 2012」(以下、PARTNERS)が開催された(関連記事:基調講演でビッグデータからより多くの価値を引き出す手段をアピール)。このカンファレンスの特徴はユーザーグループが主体となって企画・運営していることであり、ユーザー企業による100を超えるセッションが開催された。日本からも三菱東京UFJ銀行とニッセンの2社が事例を発表した(関連記事:Facebookデータのマーケティングへの活用を解説、ニッセン)。

 カンファレンスの最終日に開かれた講演の一つが「Doing Good with Data: The Case for the Ethical Data Scientist」と題されたもので、来場者であるデータサイエンティストたちにデータ活用の力を正しく使おうと呼びかける内容だった。講演者はユーザー企業ではなく米Teradataでソーシャルメディアの分析やビッグデータとトランザクションデータの融合、そしてこれらの分析を通じたビジネス上の意思決定を担当するチームを率いるDuncan Ross氏である。

「倫理に従って正しいことを積極的に行う」

 その講演の趣旨は、会場に集まったデータサイエンティストたちに次のように呼び掛けるものだった。「あらゆるデータを扱えるようになりつつある今、データサイエンティストに与えられた力と責任はとても大きなものになっている。そうした状況下では、法に従って悪いことはしないというGoogleのモットーだけでは十分ではなく、倫理に従って正しいことを積極的に行う必要がある。それこそがデータサイエンティストに求められているものだ」。

 講演ではそうした良い行いを実行している団体の例として、米国内のコミュニティであるDataKindを挙げた。このDataKindはデータ分析力をより良い世の中にするために使おうという、データサイティストたちによるボランティア団体である。資金がなくてデータサイエンティストを雇えない団体、例えばNPOやNGOなどに週末に出向いて自主的にデータ分析し、その活動に役立つ知見を導き出すというものだ。その行動が世の中を良くする結果につながることを狙っている。