読者のみなさんがいるITの現場では、RedmineやTracといったプロジェクト管理ツールを導入して使いこなしているだろうか。これらのツールはどちらも(1)現場で対応すべき課題や行うべきタスクを「チケット」という単位で管理する機能、(2)文書ファイルの管理やWikiによる情報共有機能、の二つを備える。

 ともにオープンソースソフトであるこれらのツールを、システム開発や運用の現場で導入していないようであればもったいない。ぜひ導入して現場に定着させてほしい。記者は2012年10月号(9月26日発売予定)の特集記事「助け合いを生む プロジェクト情報基盤」を担当し、約20社の現場活用事例を取材した結果を踏まえて、こう読者の皆さんに伝えたい。

 特集記事では、RedmineやTracといったツールを「プロジェクト情報基盤」として紹介している。これらのツールを導入し、現場に定着させることで、現場のマネジャーやリーダーが現場の状況を把握できるようにしている。特にお薦めしたいポイントは、「勘違いして仕事を進めるのを防げる」「書類探しに時間がかかるのを防げる」「承認手続きに時間がかかるのを防げる」という三つの取り組みだ。それぞれの実践例を紹介しよう。

勘違いして仕事を進めるのを防げる

 最初に紹介するのは、JBSソリューションズの開発現場で行っている取り組みだ。同社の開発現場では、メンバーがこれから着手するタスクをRedmineにチケットとして登録し、それをリーダーがチェックすることで、メンバーが勘違いしたまま作業を進めることを回避している。

 Redmineには、チケットの登録や変更があったときにメールで自動通知する機能がある。現場のリーダーはこの機能を使って、メンバーが作業に関するチケットを作成したり内容を変更したりしたことをつかむ。

 リーダーは、メールの自動通知を受けたとき、メンバーの入力内容をチェックするようにしている。「自分が意図していない方針で作業に取り掛かろうとしているといったことが分かるので、修正する指示を作業開始前に出せる」と、JBSソリューションズの内田健一氏(UxD事業部 副部長)はメリットを語る。

 メンバーが入力することが必須条件になるが、それができればリーダーは、勘違いによる作業の手戻りを未然に防げる。

書類探しに時間がかかるのを防げる

 開発現場では、開発計画書や基本設計書、詳細設計書と作成する書類データは多い。必要な書類データを作成し終えているかをチェックするのは一筋縄にはいかない。必要な書類データを探し出すのに一苦労だからだ。

 書類データ探しで効率化を図っているのが、NECの開発現場だ。Tracと構成管理ツールのSubversionを連携させて利用している。

 Tracでは設計書類の作成作業をチケットとして管理し、Subversionでメンバーが作成した書類データを管理。そうした上で両方を関連付け、行うべき作業とその作業で作成した書類データを一覧で確認できるようにした。「設計フェーズから開発フェーズに移行するときなど、必要な書類がそろっているかがすぐ把握できるようになった」とNECの小堀賢司氏(ソフトウェア生産革新部 シニアエキスパート)は話す。