自治体にはITのノウハウ共有がさらに必要だ。そのためにオープンソースソフトウエア(OSS)は有効な手段となり、共有の輪が広がっている――。先日開催された「オープンソースカンファレンス(OSC)2012.Government Tokyo/Fall」(関連記事)で感じたことだ。

長崎県が公開したOSSを導入した徳島県が、今度は開発したOSSを公開

 オープンソースカンファレンス(OSC)は、オープンソース関連コミュニティが集まって、全国各地で開催しているイベントだ。OSC.Governmentは、東京で開催するOSC Tokyoの1トラックとして2010年から開催されている。記者もボランティアで講師の推薦などをお手伝いさせていただいている。

 3年間開催し、講師の発表を聞いてきて感じるのが、OSSを介したITによるコストダウンや産業振興などのノウハウが、ゆっくりとだが、着実に、輪のように広がっていることだ。

写真●長崎県 CIO 総務部参事監 島村秀世氏
写真●長崎県 CIO 総務部参事監 島村秀世氏
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 例えば、第1回に登壇した講師の1人に、長崎県のCIO(Chief Information Officer)である総務部参事監 島村秀世氏がいる。長崎県はメインフレーム上の県の情報システムをLinuxにダウンサイジングしてITコストを大幅に削減している(関連記事)。それだけでなく、開発した、ノウハウの塊である県庁の業務システムをオープンソースソフトウエアとして公開した(関連記事)。

 そのシステムを採用したのが徳島県だ。徳島県 企画総務部情報システム課 専門幹の山住健治氏も第1回の講師として登壇している。徳島県は長崎県のシステムを採用後、自らOSSを開発し公開した。コンテンツ管理システム、グループウエア、ファイル共有システムなどをセットにした「自治体OSSキット」である(関連記事)。そのうちの一つであるJoruri CMSは、全国で100を超える自治体や教育機関、公共団体のホームページに採用されるまでに広がった(参考:Joruri 公式サイト導入事例)。

OpenOffice.org導入のノウハウを市のサイトで公開

写真●会津若松市 目黒純氏
写真●会津若松市 目黒純氏
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 オープンソースのオフィスソフトウエアであるOpenOffice.orgを導入し、そのノウハウを公開したのが、会津若松市だ。同市は導入にあたって直面した問題、その解決方法、マニュアルなどをホームページに公開した。山形県、徳島県、大阪府交野市、北海道深川市、愛知県豊川市、大阪府箕面市、愛媛県四国中央市など多くの自治体がその情報を参考に、あるいは実際に会津若松市を視察し、OpenOffice.orgを導入した(関連記事)。

 今回のOSC.government 2012 Tokyo Fallにはそのうちの自治体のひとつ、茨城県龍ケ崎市 政策推進部 情報政策課 吉田正也氏が登壇した。「会津若松市でできたのであれば、当市でもできる」。会津若松市の公開した情報を参考にし、また勇気づけられたと吉田氏は言う。

 会津若松市は現在、OpenOffice.orgの後継ソフトのひとつであるLibreOfficeに移行している。自治体ではないが、JA福岡市もLibreOfficeを導入、内部向けに作成したマニュアルを同組合のホームページで公開している(関連記事)。