iPhoneやiPadなどの新製品が登場すると、分解して内部構造を解説する記事が間髪いれず登場するのはもはや恒例行事となっている。海外ではiFixitなどのサイトが有名だし、当社では日経エレクトロニクスが様々な製品を分解している。筆者自身も初代iPadが登場したときに「無線の実装から見るiPadの設計思想」という分解記事をしたためた。

 こうした分解記事が人気を集めるのはなぜだろうか。想像するに、ブラックボックス化の度合いが強まりつつあるデバイスを、もっと深く理解したいという知的好奇心の表れが一番大きな理由だろう。読者もそうだが、こうした記事を書くために分解に立ち会う記者自身もわくわくしているものだ。

 このような事情は、何もコンシューマーデバイスだけに限らない。スイッチやルーターなど専用のネットワーク機器でも同じこと。興味を持つ読者対象は絞られるかもしれないが、普段利用しているネットワーク機器の中身がどうなっているのか、ちょっと見てみたいと考えるのは自然なことだ。

写真1●バッファローの「LSW3-GT-5NS」
写真1●バッファローの「LSW3-GT-5NS」
ギガビットイーサネット(1000BASE-T)を5ポート備えたLANスイッチ製品。
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 そこで日経NETWORK2012年9月号の特集記事では、様々なスイッチやルーターを分解し、どのような仕組みで動いているのか詳しく解説した。そうした写真を見る機会はほとんどないはずなので、ここでその一部を紹介しよう。

 一つめは、コンシューマー向けLANスイッチ製品、バッファローの「LSW3-GT-5NS」(写真1)。右側の3分の1が電源ユニットで、左側の3分の2を占めるのがメインボードだ。メインボードの中央にあるのがヒートシンクで、この下に「スイッチチップ」と呼ばれるASICがある。実は、LANスイッチのほとんどの機能がこの1個のチップに集積化されている。

写真2●シスコシステムズの「Cisco Catalyst 6500」の「Supervisor 2T」
写真2●シスコシステムズの「Cisco Catalyst 6500」の「Supervisor 2T」
ラインカードをつなぐスイッチファブリックを搭載するモジュール。
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 もう一つは、企業向けのレイヤー3スイッチ製品であるシスコシステムズの「Cisco Catalyst 6500」のモジュールの一つ。具体的には「Supervisor 2T」と呼ばれる最新型のモジュールで、最大2Tビット/秒を実現するスイッチファブリックを搭載する。この規模になると、発熱やコストが大きくなるため、すべての機能をワンチップ化するのは難しく、ある程度、機能ごとにASICが分かれている。

 いずれにしても、ムーアの法則に従って、いくつもの機能が一つのASICに統合されていく傾向は年々強くなっており、その意味では、バラした写真を見ても仕組みが分かりにくくなっていることは事実だろう。とはいえ、中身を見れば、ブラックボックスだった装置に親しみを抱き、分かったつもりになれるのも確か。理解を深めるためのとっかかりとして十分だろう。

 最後に、お約束だが一言お断りを。こうした製品を分解すると保証を受けられなくなる恐れがあります。分解するなら自己責任でお願いします。