開発プロジェクトで部下の作業が遅れたとき、プロジェクトマネジャー(PM)やリーダーは、どんな行動を取るべきか――。先日、日経SYSTEMSの取材で訪れた方々と、こんな話題で議論を交わした。

 驚いたのは、過去と現在でその行動に変化が表れていることだ。かつて多かったのは「叱責」である。「今のままでは納期に間に合わないぞ」「早く終わるようにもっと頑張れ」。作業の遅れを挽回してもらうために、メンバーの気持ちを引き締ることを狙ったものだ。

 しかし現在は、この方法が通用しないばかりか、かえって遅れを大きくすることがあるというのだ。世代間ギャップだという面はあるだろうが、それだけで片付けるのは乱暴かもしれない。昔と違って今のプロジェクトは、メンバー数がかなり絞られている上に、納期もより厳しくなっている。そうした中で「頑張れ」「早くやれ」という一方的な叱責は、メンバーのやる気を削ぎ、さらに遅れを大きくする可能性がある。

やる気を向上させて遅れを挽回

 ではどうするか。あるベテランPMは「仕事が終わったらうまいものでも食べに行こう」、別のPMは「このシステムをリリースしたら、業界内でもかなりインパクトがあるな」などと声をかけ、メンバーのやる気向上を図っている。つまり、やる気向上によって作業効率をそれまで以上に高め、遅れを挽回するという方法だ。

 注意しなければならないのは、叱責以外の行動によっても、メンバーのやる気を削いでしまうことである。別のベテランPMは、PMやリーダーの何気ない行動がやる気を削ぎ、遅延を大きくすると指摘する。以下では、その代表的な二つの行動パターンを挙げてみたい。

(1)進捗管理をより厳密にする

 一つは、進捗が遅れたことで管理をより厳密にするケースである。

 例えば、「より細かい作業レベルで管理する」という行動だ。作業の進捗報告の単位を細かくしたり、報告頻度を短くしたりするケースである。朝会に加えて夕会を追加するケースなどもこれに当たる。

 もちろん、PMやリーダーにとって進捗状況がどうなっているのか気がかりである。だが、こうした行動は、メンバーの作業時間を奪い、さらに精神的な疲弊を招いてしまうようだ。PMやリーダーとして管理負担が高まることがあっても、メンバーへの管理負担はむしろ軽くすることを遅延時には心掛ける必要がある。

(2)視点のズレた指摘をする

 もう一つは視点のズレた指摘をする行動である。例えば「メンバーの姿勢や能力の問題だと片付ける」ことがその一つ。いつも作業が遅れるメンバーはいるかもしれないが、本質的な問題は別にあるかもしれない。そうしたことをメンバーの姿勢や能力だとすぐに決め付ければ、メンバーのやる気は下がる一方だ。

 PMやリーダーの視点が「予定との遅れだけに着目する」という行動も問題となるようだ。あるPMO(Project Management Office)の幹部は「管理指標の表面だけを捉えるPMが少なくない。遅延発生の原因にこそ目を向ける必要がある」と指摘する。これもメンバーのやる気を削ぐ原因となる。

みんなで頑張る一体感を生む

 正直言って、PMやリーダーにとっては、面倒な時代に突入したのかもしれない。メンバーの作業遅れが発生しやすい上に、遅れたメンバーのやる気まで配慮しなければならないからだ。前出のあるPMは「仕方がない。そういう時代だ」と嘆く。

 さらにいえば最近は、「やる気のもと」も人によって異なる。メンバーの特性に応じて、言動や行動を考えなければならない。

 もっとも、メンバーのやる気を向上させる共通項は「みんなで頑張る一体感を生むこと」と言うこともできよう。先の例で言えば、プロジェクト終了後の褒美やシステムの意義を共有することで、一体感を生んでいる。その意味では、PMやリーダーがメンバーと目線を合わせられれば、きっとメンバーのやる気向上につながるはずである。