写真1●最新鋭「ボーイング787」の窓から見えた瀬戸内海
写真1●最新鋭「ボーイング787」の窓から見えた瀬戸内海
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 8月4、5日の土日を使って「情報化研究会」恒例の研究会旅行に行った。今年の目的地は7年ぶりの松山で、8人が参加した。幸い好天に恵まれ、飛行機の窓からは瀬戸内海がきれいに見えた(写真1)。強い日差しを受けて深い青色になっている海面に、船が白い航跡を描いていた。

 さて、本論に入ろう。ある日曜日、新聞の書評欄を見ていると「Think Simple―アップルを生みだす熱狂的哲学」(ケン・シーガル著、NHK出版)という本が目に入った。著者はスティーブ・ジョブズの下、米アップルでクリエイティブディレクターを務めた人物である。iMacを命名し、その後のiシリーズを生んだことで知られる。書評の一文に深く共感した。「経営でも商品戦略でも重要なことは本質を見極め、無駄な部分を省き、それをストレートに消費者に伝えることだ」。

 「本質を見極め、無駄を省き、ストレートに伝える」ことはスケールこそ違うが、筆者が企業ネットワークの提案書を作成したり、プレゼンをするときの考え方と基本的に同じだ。提案の本質を分かりやすく伝える提案書作りに定型はないが、筆者は提案書の表紙と最初の3ページで提案の核心を明瞭に伝えることを心がけている。

 今回は筆者流のThinkSimpleな提案書作りについて述べたい。

表紙は「オモテの紙」ではない

 提案書では表紙が重要だ。お客様が最初に見るページだからである。表紙は単なる「オモテの紙」ではなく、提案書の本質を「表す紙」でなければならない。「次期営業店ネットワークご提案書」などという表題が書いてあるだけではダメだ。

 筆者は表題の下にお客様に一番伝えたい提案書のエッセンスを短文で書く。古い例と最近の例を紹介しよう。

 10年前の2002年に作った大規模なIP電話の提案書の表紙には「次期ネットワークご提案書 ─IP-Centrex/SIPによる革新的ネットワークの安全・確実な構築─」と書いた。当時、新聞などで報道され「東ガス・ショック」と言われたほど革新的なことを、いかに確実に設計・移行するか。実現することだけでなく、その方法にも重点を置いた。

 2011年に作った、1000店舗を超えるドラッグストアを運営するツルハホールディング様向けの提案書には「次期ネットワークご提案書 ─『ツルハ・モデル』の実現に向けて─」と書いた。同社と公衆無線LAN事業者とでネットワークシェアリングを実現するツルハ・モデルが、最も訴求したいポイントだったからである。