社会保障・税にかかわる番号制度を定める「マイナンバー法案(正式名称:行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案)」がなかなか成立しない。

 同法案が2012年2月14日に国会に提出されてから丸半年。政府が進める社会保障・税一体改革の柱である消費増税法案は、民自公の3党合意によりなんとか成立にこぎ着けた。しかし、9月8日の延長国会の会期末まで残すところ2週間余りしかない。ほかにも赤字国債発行法案や衆院選挙制度改革関連法案(1票の格差の是正)、原子力規制委員会の国会同意人事などの懸案を抱え、マイナンバー法案の成立に黄信号がともろうとしている。

 もし秋の臨時国会での継続審議となれば、9月の民自両党の代表・総裁選や衆院解散・総選挙、その後の政界再編なども絡んで、制度導入に向けたスケジュールは一気に不透明さを増すことになる。

政府CIOの人選は制度導入に向けての光明

 こうした状況ながら、マイナンバー制度の導入に向けて光明となる出来事があった。「政府CIO(情報化統括責任者)」の人選が、リコージャパン顧問で経団連の電子行政推進委員会電子行政推進部会長を務める遠藤紘一氏に決まったことである(関連記事)。8月10日に岡田副総理が定例記者会見で発表し、同日中に事務局として内閣官房に政府CIO室を設置した。

 政府CIOの設置は、政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)が2011年8月に決定した「電子行政推進に関する基本方針」で推進がうたわれていた。政府は2012年3月、IT戦略本部と行政改革実行本部の下に「政府情報システム刷新有識者会議」を置き、具体的な制度設計を進めてきた。

 両本部とも本部長は野田首相が務めるが、行革本部は本部長代行の岡田副総理(行政改革担当)が、IT戦略本部は副本部長の古川特命担当大臣(科学技術政策担当)が、それぞれ実質的な運営役を担っている。有識者会議では5月の第3回会合で岡田副総理が政府CIOの早期設置を確約し、6月の第4回会合では古川大臣が7月をめどに政府CIOを設置することを明言していた(関連記事)。政府CIOとなる遠藤氏は同会議の構成員でもある。

 政府CIOは電子行政推進の司令塔となり、「電子行政推進に関する基本方針」に掲げられた戦略の企画・立案・推進、政府全体のIT投資の管理などの役割を担う。政府は、具体的な役割や権限を定める法案を2013年の次期通常国会へ提出する方針であり、それまでは有識者会議が8月9日の第6回会合で決定した「政府情報システム刷新のための共通方針(提言)」に沿って活動することになるとしている。

 この共通方針では、マイナンバー制度は「現下の電子行政の最重要課題」に位置づけられている。「政府CIOが特に強いリーダーシップを発揮」する必要があるとしており、マイナンバー制度の推進にとって政府CIOは強力な援軍となるはずだ。