新しいサービスを生み出すことの重要性がますます高まっている。スマートフォンやソーシャルネットワークなどの成功にならい、商品そのものよりも利用シーンを訴求したり、海外に事例を求めたりする動きが増えた。一方で、「最新」と呼ばれるサービスに触れても、それを支えるITの仕組みを聞いたとたん「どこかで見た・聞いたことがある」など、“デジャブ(既視感)”を覚え、興味を失ってしまうことがある。このデジャブ感こそが、新しいサービスの芽を摘んでいるのではないだろうか。

色々な実証実験を散々やってきた

 環境、エネルギー、社会インフラなどをカバーする「日経BPクリーンテック研究所」という部署に所属する筆者が最近追いかけているテーマは、「スマートシティ」や「スマートコミュニティ」などと総称される社会インフラおよび社会に向けたサービスである。環境に配慮しながらも経済的な持続性を高め、豊かなQoL(生活の質)を保てる都市あるいは社会作りを目指す取り組みだ。少子高齢化や老朽化が進むインフラの整備といった社会的課題を、できるだけ低コストで、だが高い品質で実現するビジネスモデルの開発などが大きなテーマである。

 そうした分野においても、先進的と評される社会向けサービスは海外発であることが少なくない。例えば、都市部への自動車の流入を課金によって制限するロードプライシングや、自治体が担うサービスのほとんどを外注し自治体職員は数人のみといった行政アウトソーシングなどだ。それらを支えるITシステムを見れば、各種センサーやカメラを使った自動車の認識であったり、24時間運用のコールセンターであったりする。

 ここで浮かぶのが、冒頭で挙げた“デジャブ”である。日本にも、高速道路にはETC(電子料金収受システム)があるし、登録ナンバーを正確に読み取る自動速度取り締まり機もある。コールセンター自体は全く珍しくはないし、「どんな苦情を抱える顧客でも最後はファンにしてしまうオペレーター」などもテレビ番組が既に取り上げていそうではないか。

 実際、社会インフラ系サービスにおいても、ITが「国際競争力だ」と叫ばれた2000年に始まった「e-Japan」や、それに続く「u-Japan」の両構想を筆頭に、高速インターネットや無線通信、携帯電話などを使った各種の実証実験が繰り返されている。老人介護や地域コミュニティの活性化といったテーマも、今に始まったことではない。

 例えば、3.11以降、一気に関心が高まったスマートメーターや、そのインフラとなるM2M(マシン・ツー・マシン)などにしても、自動検針用途の通信機能付き電力計は以前から実用化されているし、自動販売機の売り上げを遠隔で把握するテレメタリングなどもあった。スマートメーターと家電製品を結ぶ規格として2012年2月に認定された「ECHONET-Lite」も、その元になっている「ECHONET」の第1版が規定されたのは2000年3月のことである。