この原稿を書いている7月中旬、九州北部は豪雨に襲われ福岡県柳川市も大きな被害を受けた。激しい濁流の中で軽トラックの荷台に取り残された男性が救助される様子が、繰り返しニュースで流れた。

 柳川市には研究会の旅行で2004年夏に訪れたことがある。掘割が縦横にめぐらされた穏やかな風情の街である。岸から堀の中央近くまで枝を張り出した巨木の影の下を、川下りの船で通ったことが印象に残っている。一日も早く元の落ち着きを取り戻すことを祈りたい。

 さて、本題に入ろう。提案は筆者の大事な仕事だが、規模の大きなネットワークの提案には人手とコストがかかる。お客様にとってのメリットが見出せず、こちらも受注や利益が期待できない「無駄な」提案はすべきではない。営業はとにかく提案しようとする。しかし、提案すること自体が目的ではなく、お客様もこちらもメリットを得ることが目的であることを忘れないことだ。

 無駄な提案をしないためには、お客様との初回の折衝で、効果のある提案が出来るかどうか見極めるのがよい。今回は無駄な提案をしないための見極めについて述べたい。

こんな提案が無駄になる

 無駄な提案になる代表的なパターンは4つある。(1)経済効果が出ない、あるいはそれに代わるメリットがない、(2)提案にコストがかかりすぎる、(3)提案前の「営業」で負けている、(4)オーソライズされた提案ではない---だ。

 ネットワークを再構築する目的としてコスト削減は一番分かりやすい。現行と比べて20%以上削減できそうであれば有望と言える。経済効果がなくても、ほかの目的がある場合には提案が成立する。例えばBCP(事業継続計画)を実現するためのネットワークは、元々お客様が経済効果を求めていない。経済効果もなく、それに代わるメリットもなければ提案は成立しようがない。

 (2)の提案にコストがかかり過ぎるというのは、無駄とは少し意味が違うが、提案する側には切実な問題だ。ネットワークの規模が大きく求められる要件が複雑だと、提案書を作成するだけで膨大な人件費がかかる。筆者はこういう場合、ネットワークそのものの提案ではなく、あるべきネットワークを設計するための有償コンサルティングを提案する。

 提案以前の営業で負けている典型的な例は、RFP(提案依頼書)が出来上がってから提案を求められるケースだ。RFP以前にRFI(情報提供依頼書)で提案したベンダーや、お客様のRFP作成をサポートしたベンダーが有利であり、RFPをもらってからの提案は営業的に大きく出遅れている。

 オーソライズされてない提案とは、担当者が勉強のためにベンダーに提案させるようなケースだ。