年明け早々、あるベストセラーの著者を取材したことがある。その時いただいた名刺に度肝を抜かれた。名前しか書かれていなかったからだ。

筆者:「す、すみません、これでどうやって連絡を取ればいいのでしょうか?」(筆者はこの著者を第三者から紹介してもらったので、連絡先を知る機会はこのときがはじめてだった)
ある著者:「Facebookで名前を検索してください」
筆者:「それで友だち申請してもいいですか?」
ある著者:「実際こうやって会ってるから、申請してもらえれば承認しますよ」
筆者:「そうさせていただきます」

 その後、Facebook上で「友だち」となり、メッセージをやりとりしつつメールアドレスを教えてもらい、取材時の発言内容の確認などをやりとりさせていただいた。

 なぜ冒頭にこの話を持ってきたかというと、「電話をかける」というコミュニケ―ション手段が完全に“取っ払われて”いたからだ。もちろん、電話番号を教えたくなかったということがあるかもしれないが、「リアルで会えば、あとはネットで」というコミュニケーションのあり方はとてもイマドキである。

IP電話との親和性が高いAndroid

 ただ、「電話をかける」というコミュニケーション手段を「通話」という機能で見ると、スマートフォンの普及に伴い、以前よりもむしろ広がってきたと筆者は感じている。通話機能が一アプリケーションとなったことで、携帯電話事業者以外が通話機能を提供できるようになったためだ。「リアルで会えば、あとはネットで」の後半部分の「ネットで」の中に、音声を気軽に選択肢として入れられるようになったのだ。

 その代表例として無料の音声通話やチャットを利用できるアプリである「LINE(ライン)」(NHN Japan)が挙げられる。コミュニケーションのプラットフォームとして新たな展開に取り組んでいるのは既報の通りだ(関連記事)。

 もう一つ、スマートフォンの普及とともに、改めて注目が集まっている音声通話サービスがある。050番号を付与するIP電話サービスである。NTTコミュニケーションズの「050 plus」(写真1関連記事関連記事)とフュージョンコミュニケーションズの「FUSION IP-Phone SMART」(写真2、関連記事)が挙げられる。いずれもスマートフォンに050番号による発着信機能を付加するサービスである。「050 plus」はスマートフォン向けアプリとして提供、「FUSION IP-Phone SMART」はサードパーティー製のスマートフォン用IP電話アプリを自由に選べるサービスである。

写真1●NTTコミュニケーションズの「050 plus」のダイヤル画面
「050 plus」はアプリとして提供される
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写真2●フュージョンコミュニケーションズの「FUSION IP-Phone SMART」の利用例
サードパーティー製のIP電話アプリ「エイジフォン for iPhone」を使用した例
[画像のクリックで拡大表示]

 スマートフォン側にもこうした動きを後押しする機能が加わっている。Android 4.0の例を見てみよう。実際試しているスマートフォンは無線LANには接続しているものの、SIMは入れていないため携帯電話事業者が提供する回線交換による携帯電話サービスは利用できない。そうした状態であってもSIP(Session Initation Protocol)を使うIP電話による発着信ができてしまう。