前回、「営業はどんなSEを信頼するか」について書いた。そして読者の方々から多くのコメントを頂いた。きっとIT企業のSEと営業の方々の関心が高いのだと思う。

 だが、読者のSEの方々の中には、「営業との信頼関係が重要なのは分かる。SEは営業と信頼関係がないと良い仕事ができないのも分かる。そのためにSEが(1)プロジェクトをきちっとやる。(2)技術的なことについてはYES/NOをはっきり言う。(3)顧客の部課長や担当者に信頼されることをやるべしと言うのも分かる。だが、うちの会社では無理だ。うちの営業はSEの意見をほとんど聞かないし、SEの仕事を勝手に決める。そして、無理なシステムを売る。上司さえ営業の言う通りにする…」と言いたい人もいると思う。また「馬場さんの意見は理想論だ。現実を知らない。今は馬場さんの時代とは違う」と批判的な方もいると思う。

営業に文句を言うのは度胸がいる

 筆者はその気持ちが分からないでもない。確かに第一線のSEにとって、営業との関係は難しい。SEとうまく協業をやろうとする営業はともかく、SEに仕事を押し付けたり、ITをろくに勉強もせずSEの意見を無視したりするなど、理不尽な営業と仕事をする時は困る。文句を言いたくなる時や頭にくる時がある。ときには喧嘩をしたくなる時もある。

 だが営業に文句を言っても、なかなか営業はSEの意見を聞かない。それが恒常的になると、「うちの会社では無理だ」とか「理想論だ」という考えに陥りやすいものだ。筆者も現役時代、同じような経験を何回となくした。

 そんな時、文句を言って自分の意見を通すか、文句を言っても仕方ないから営業の言う通りにするか、逃げるか、と悩んだ。言うまでもないが、文句を言うにしても、営業らしい営業もそうでない営業も「営業は営業」である。しかも営業はSEより権力がある。

 すると文句を言って闘うには度胸がいる。しかも負けては意味がない。営業に嫌われると自分が損をする。あれやこれやと考え、「自分はどうすればいいのか」と悩んだ。葛藤もした。いろんな人に相談した。意見も聞いた。そして色々と考えた挙句、筆者は腹をくくって理不尽な営業とは闘うことにした。現役時代、営業と真正面から闘った。その闘い方については、これまでのコラムで書いてきた。

 そこで今回は、「なぜ筆者は営業と闘ったか」「その原点は何だったか」「そのために何をやったか」について述べたい。SEの方々にとって、きっと営業と真の信頼関係を築くための第一歩になるはずである。