音声通話を実現する手段として、最近ではSkypeやLINEのように、コーデックと相手のIDだけで通話を実現する、いわゆるインターネット電話のツールやアプリが次々と登場している。スマートフォンと無線通信手段の進化によって、それを使いこなすリテラシーとマイクとスピーカーさえあれば、いろんな方法で音声のやりとりは可能になっている。

 実はこの流れが、通信品質を一定の水準に確保することが割り当て条件になっている「電話番号(0AB~J番号)を使った通話サービス」にも影響し始めている。

ベストエフォートでも品質は十分とソフトバンクが主張

 その一つの例が、ソフトバンクが提案しているベストエフォート品質の通信で実現する、0AB~J番号を使えるIP電話だ(関連記事:ソフトバンクがNTT対抗の光IP電話を提供へ、年内にも「ひかり電話」より安く)。

 同社は「NTT東西のNGNを使えば、ベストエフォートクラスの通信品質でも03などの市外局番で始まる0AB~J番号の電話が実現可能だ」と主張。インターネット接続事業者が使う相互接続点経由で、0AB~J番号のIP電話をフレッツ光ユーザーに提供しようと考えている。

 NTT東西のひかり電話は、NGNの内部でベストエフォート通信より高い優先制御を効かせている。この品質保証体制によって0AB~J番号の割り当てを受けている。これに対してソフトバンクは、自社で独自にベストエフォートの通信品質を計測し、その結果を基に「優先制御をかける場合と比べて遜色ない品質を保てる」と主張しているのだ。

 そのからくりは、まだユーザーが少なく混雑の影響が少ないIPv6インターネットを使うことにある。IPv6インターネットであれば、ベストエフォート通信でもNGN内部ではほとんどパケットロスや遅延が起こらないことが計測の結果分かったという。

 ソフトバンクはこのサービスに、万が一の際のバックアップ手段も付け加えて、0AB~J IP電話並みの安定品質を保つという。ソフトバンクグループのIPv6インターネットサービスは、ソフトバンク側からNGN内部の経路を制御できるネイティブ接続方式を採用している。このためNGN内部のどこかに混雑が生じた場合には、あらかじめ地域的に分散設置したう回専用のフレッツ光回線に通信経路を変更し、そこからソフトバンクテレコムの固定電話網に通話を通すことで、局所的に発生するかもしれない混雑を回避させるという。

 さらに二重のバックアップ体制として、NGNのベストエフォート通信そのものが完全にダウンするような事態にも備える。メタル回線の「おとくライン」を最終バックアップ手段として提供することも想定しているという。

 この提案が、実際に0AB~J番号の割り当てが可能な品質水準と言えるかどうかは総務省情報通信審議会の作業班で検討中で、まだ提供可能だと決まったわけではない。

 ただし、作業班ではこの提案を時間をかけて深掘りし、現行制度で定めた品質基準を見直す必要があるかどうかの検討に取り組む姿勢だ。もし、ベストエフォートでも0AB~J電話が提供可能という方針になれば、ソフトバンクに限らずNGNに接続しているインターネット接続事業者すべてに0AB~J電話への参入機会が広がることになる。