語彙は「ごい」と読む。広辞苑を引くと次のように出ている。

 「一つの言語の、あるいはその中のある範囲についての、単語の総体。vocabulary」

 「日本語の語彙」は日本語で使われる単語の総体であり、「ITproの語彙」は本サイトの中で使われる単語の総体である。

 「ある範囲」は個人を指す場合もある。例えば「徳田さんの語彙」と言ったら徳田さんという人が知っている単語の総体であり、「石井さんの語彙」と言ったら石井さんが知っている単語の総体である。

 範囲をどうとるかで語彙は異なり、そこに含まれる単語の数も異なる。これを語彙数と呼ぶことにする。本稿の主題は「SE(システムズエンジニア)の語彙数」である。プロのSEとしてやっていくために、どのくらいの語彙数が必要だろうか。もし今の語彙数が足りないのであれば、どのように増やせばよいのか。

 以下の問答は、3000人のSEやSEマネジャに文章作法を指導してきた福田修氏(テクノロジー・オブ・アジア代表取締役)と、日経BPビジョナリー経営研究所研究員の谷島によるものである。

 福田氏は日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)でソフトウエア文章化プロジェクトのリーダーを務め、その成果をまとめた書籍『SEを極める 仕事に役立つ文章作成術』を出版している。

◇       ◇       ◇

 「自分の語彙数がどのくらいかご存じか」

 「分かりません。どうやって測るのですか」

 「語彙数推定テストというものがWeb上に公開されている。NTTコミュニケーション科学基礎研究所が開発しており、2、3分間で済むテストを受けるとおおよその語彙数が分かる。やってみてはどうか」

 「ちょっとお待ち下さい。『あなたの語彙数は55200語です』と表示されました。いくつかテストがありますね。全部やってみましょう。今度は『52800語』でした。もう一つやってしまいます。おっ、『64600語』ですね」

 「やや物足りない。50代で記者、つまり言葉を使う仕事をされているのだから本来、6万~7万語はないと。仕事をしている50代なら語彙数は5万語前後ある。ざっと言うと、中学校までに3万語、高校までに4万語、4年制大学を卒業するまでに5万語に出会う。ただし大学生の多くは勉強などしていないから社会に出た時の語彙数は4万語あるかないか」

 「・・・・」

 「あくまでも目安なので落ち込むことはない。このテストは新明解国語辞典を基にして語彙数を推定する。専門分野で仕事をしている人は専門用語を知っているから語彙数はもっと多い。IT関連の仕事をするSEはIT専門用語の語彙を持っている」