1996年前後に生まれた今の中高生は、物心ついたときからスマートフォンやタブレット端末を身近に感じ使いこなす「スマホ世代」。中高生だからといって、あなどってはいけない。社会人顔負けのプログラミング技術を持つ人が何人もいる。

 開発ツールが安く手に入るようになり、やる気さえあれば年齢に関係なく技術を磨ける環境が整っている。部活の感覚で成果を披露できる競技会(コンテスト)も増えてきた。IT業界にとって、彼らは10年後に戦力となるかもしれない貴重な宝だ。そんなすご腕の中高生やプログラミング技術を磨ける場を取材した。

 詳しくは日経コンピュータ5月24日号の特集記事「驚異の『スマホ世代』10年後を支えるIT人材はこう育つ」をお読みいただきたいが、社会人とともに勉強会やプロジェクトをこなす中高生がいる。

 灘高等学校に通う矢倉大夢君は高校1年生。パソコン研究部の部長を務めるが、活動の場は学校内にとどまらない。中学3年生の時に、合格率が10%台の情報セキュリティスペシャリストに最年少で合格した。休日には社会人に交じって勉強会に参加し、発表もこなす。懇親会にもノンアルコールで参加するという。

 矢倉君は今、オンラインジャッジシステムの開発に取り組んでいる。25歳以下を対象に最先端技術開発を支援するIPA(情報処理推進機構)の「未踏プロジェクト」には最年少で採択された。120万円の開発費もついた。

 オンラインジャッジとは、時間とメモリーを制限した環境で、いかに早く正解を導き出すプログラムを書けるかを競うもの。書いたプログラムを競技者のパソコン内でデバッグしてサーバーへアップロードする。矢倉君は、アップロードされたプログラムを実行して評価するシステムを開発しているのだ。「既存システムは上位1%の優秀なプログラマーか管理者しか問題を追加できなかった。誰でも設問を作れる環境を用意し、競技者人口を増やしたい」と話す。

 中学2年の角南萌さんもプログラミング技術を学んでいる。毎朝の通学時には、iTunes Uでダウンロードした米スタンフォード大学のプログラミングの授業をiPhoneで見ている。2011年の夏休みには、スタンフォード大学が開催したサマーキャンプにも通った。学校の授業では十分に学べないので、校外に機会を求めたのだ。iPhoneを愛用するようになったのは数年前から。自作したアプリをApp Storeで公開することが当面の目標だ。「プログラミングはオタクがやるものというイメージがある。それをクール(かっこいい)というイメージに変えたい」と願う。

 2人とも自ら道を開いてきた。スマホ世代はきっかけさえつかめば才能を開花する可能性がある。社会人サークルがプログラミングを無料で教えたり、中学校や高校でも授業に取り入れようとする動きも出てきたりしている。それらは良いきっかけになり得るだろう。

 江戸時代以来、身に付けるべき能力は「読み・書き・そろばん」だと言われてきた。近い将来、「読み・書き・プログラミング」という日が訪れるかもしれない。