司法制度改革の一環として、2004年に法科大学院制度が鳴り物入りで導入された。ところが、司法試験の合格率が低迷したことにより、僅か数年で多くの法科大学院が存亡の危機に立たされている。
司法試験の合格率は低すぎなのか
表1に示す通り、司法試験の最近の合格者数は約2000人であるが、法科大学院の関係者は合格者が少なすぎると不平を漏らしているようだ。確かに当初は、政府も年間合格者の目標を3000人としていたが、こんな数字を当てにするほうがどうかしている。
年度 | 受験者 | 合格者 | 合格率 |
---|---|---|---|
平成18年度 | 2091人 | 1009人 | 48.25% |
平成19年度 | 4607人 | 1851人 | 40.18% |
平成20年度 | 6261人 | 2065人 | 32.98% |
平成21年度 | 7392人 | 2043人 | 27.64% |
平成22年度 | 8163人 | 2074人 | 25.41% |
平成23年度 | 8765人 | 2063人 | 23.54% |
1980年代には、司法試験の合格者は年間500人程度にすぎなかった。90年代に入って増加傾向となったが、それでも年間1000人に達したのは99年のことである。それから考えると、年間合格者2000人という現在の数字でも多すぎるほどだ。
弁護士の数で見ると、1991年に1万4080人、2001年に1万8243人であったのに対し、2011年には3万485人へと急膨張した。その結果、法曹人口の過剰という問題が生じ、せっかく司法修習まで終えた弁護士志望者が就職先を見つけられないケースが続出している。
適正数を上回っている法科大学院
つまり、問題は合格者が少ないことではなく、受験者が多すぎることだ。法科大学院は全国で74校、入学定員は5825人である。制度の検討段階では、法科大学院の適正数が20~30校程度とされていたことを踏まえると、この74校という数字は明らかに過大だ。法科大学院の数が増えればそれだけ受験者数も増え、合格率が低くなるのは当然である。
さらに問題を深刻にしているのは、法科大学院の二極分化が進んでいることだ。表2に示すように、2011年度の合格者数の上位10校では、合格者が合わせて1220人(総数の59.1%)、平均合格率39.6%である。その一方で、合格者5人未満という法科大学院が、実に18校に達している。
大学名 | 受験者 | 合格者 | 合格率 |
---|---|---|---|
東京大学法科大学院 | 416人 | 210人 | 50.5% |
中央大学法科大学院 | 461人 | 176人 | 38.2% |
京都大学法科大学院 | 315人 | 172人 | 54.6% |
慶應義塾大学法科大学院 | 342人 | 164人 | 48.0% |
早稲田大学法科大学院 | 432人 | 138人 | 31.9% |
明治大学法科大学院 | 375人 | 90人 | 24.0% |
一橋大学法科大学院 | 142人 | 82人 | 57.7% |
神戸大学法科大学院 | 148人 | 69人 | 46.6% |
同志社大学法科大学院 | 277人 | 65人 | 23.5% |
東北大学法科大学院 | 170人 | 54人 | 31.8% |
3078人 | 1220人 | 39.6% |
結局のところ、法科大学院の乱立こそが最大のガンである。旧司法試験制度下でろくに合格者を出していなかった大学が、次々と法科大学院の設立に踏み切ったことが、そもそもの間違いなのだ。
ちなみに、姫路独協大学では、2010年と2011年の合格者がゼロとなったことを受けて、いよいよ法科大学院の廃止に踏み切った。それに倣って、今後は法科大学院の統廃合が進むことになるだろう。