「ITエンジニアは、超上流工程を担えるように“変わらなきゃ!”いけない。一見難しそうだけれども、やろうと思えば変われるぞ!」。日経SYSTEMS 6月号の特集記事「変わらなきゃ!ITエンジニア」の取材・執筆を通してこう確信している。

 ここで「変わらなきゃ!」と言っているのは、ITエンジニアが担う役割についてである。ITエンジニアは「示された要件に沿って確実にシステムを仕上げる」という従来の役割だけでなく、「新ビジネスの企画」「業務改革の方針策定」「最新技術の適用方針の策定」といった、超上流工程を担う必要が出てきた。

 ITなしではビジネスが成り立たなくなっている今、ITエンジニアがITの専門家として超上流工程に参画することは不可欠。システム利用部門の担当者と共にビジネス企画や業務改革方針を考えて、ビジネスに対して新しい価値を生んでいこう、と提案したい。

 特集記事では、超上流工程で行うべきことと合わせて、新ビジネスの企画、業務改革方針決め、ITを支える新しいシステム基盤作りなどに携わって成果を上げたITエンジニアの取り組みを紹介している。

 ここでITエンジニアである読者の皆さんは、「いくらITなしではビジネスが成り立たないとはいえ、新ビジネスの企画や業務改革方針の策定は難しそうだ。簡単には変われないよ」と思うかもしれない。

 しかし待ってほしい。システム開発の現場でちょっとした取り組みをITエンジニアがすることで、大きな成果を上げられることが分かった。ここではそれをいくつか紹介しよう。

「現行踏襲」の要望を疑う

 「新しいシステムは現行システムを踏襲したものにしてほしい」。システム再構築プロジェクトを始めるに当たって、利用部門の担当者からこういった要望が出されることは少なくないだろう。

 しかし「その要望を受け入れて新システムを開発しても、新しい価値は生まれない」と、住友電気工業の堀正尚氏(情報システム部 情報技術部 システム技術グループ グループ長)は指摘する。堀氏が以前、SEとして参画したある販売管理システムの開発プロジェクトでも「現行踏襲」の要望が出てきた。

 このとき堀氏がやったことは、その要望を疑うこと。現行システムにおける業務を分析し、本当に問題がないのかを確かめてみた。すると在庫管理のある処理手順が多いことが判明。「新しい仕組みを考えて、簡素化しても業務が回るようにできた」(堀氏)という。