春は初々しい新入社員の姿が街で眼につく。パッと見て新社会人だと分かるのは、身に付けているスーツが就活風であるだけでなく、体全体から固い新鮮さが発散されているからだ。それが半年も経つと、普通のサラリーマンと区別がつかなくなる。

 筆者のプロジェクトにも、連休明けに新人が1人配属された。会社になじみ、仕事に慣れることも大事だが、ちょっとはじけているくらいの元気で新鮮な風を送り込んでほしいものだ。

 さて、今回は2012年4月7日に開催した「第36回情報化研究会・第13回京都研究会」での筆者の講演、「変えてやろう、ネットワークの世界」を紹介したい。

ネットワークにかかわり四半世紀

 実はこの春は、筆者にとって大きな節目に当たる。1987年にパケット交換機を使ったネットワークを銀行に提案し、受注した。銀行でパケット交換を使うのは国内初だった。このときに企業ネットワークの仕事を始めてから25年。四半世紀たったのである。

 筆者の講演では、「脱・Ciscoはふつうのことになった」「ツルハ・モデルによるネットワーク・シェアリングをやろう」「第二段階に入ったスマートデバイス活用」の3つをポイントとして話をした。「変えてやろう、ネットワークの世界」は、講演の最後に1枚のスライドを映して話しただけだ。

 ネットワーク人として四半世紀のキャリアを積んだ自分自身に対し、もう一度基本に立ち帰れと戒め、研究会に参加したNTTグループに勤める若手などにエールを送りたかった。

 最後のスライドに書いたのは次の短い3つの文、「仕事の基本はお客様の信頼と期待に応えること」「一つのモデルでネットワークの世界は変えられる」「すべては“!” から始まる」である。

一つのモデルで変えられる

 1つめの「仕事の基本はお客様の信頼と期待に応えること」はあまりに当たり前のことだ。しかし、これを常に実践できていると胸を張れる人がどれほどいるだろう。提案や設計・構築フェーズは、仕事自体が楽しくプロジェクトの体制も大きいので実践しやすい。短期間の仕事だから緊張感も保ちやすい。だが地味で泥臭い仕事が多く、長期にわたる運用フェーズでサービスの品質を保ち、お客様の満足を得るには相当な努力が要る。

 筆者は3年前にNECに転社した。当時は自分のお客様というのはいないので、提案し受注することに集中していた。しかし、今は大規模なネットワークを複数運用する責任者でもある。新規の仕事を受注することも大事だが、運用をきちんとすることはもっと重要だ。なぜか。運用中のお客様には仕事を発注していただき、毎月お金をいただいているからだ。受注していない提案中のお客様より、優先すべきなのは当然だ。受注してしまえば終わりと思っている営業や、作ってしまえば終わりと思っている設計は最低だ。

 最後のスライドに書いた2つめの文、「一つのモデルでネットワークの世界は変えられる」は、筆者の仕事におけるポリシーである。ネットワークの仕事をするうえで、技術やサービスの変化に追随していくだけではつまらない。「変化を引き起こしてやろう」という気持ちで仕事をしている。

 新しいアイデアや技術を取り入れたネットワークを提案・受注し、構築すると、それをモデルとして同様のネットワークがどんどん作られるようになる。新しいモデルを実現することで、自分が直接担当するお客様に貢献するだけでなく、大げさに言えばネットワーク業界の役に立てる。10年前の東京ガス・IP電話も、最近のツルハ・モデル(ツルハ・モデルについて書いた当コラムの記事)も、そんな気持ちで取り組んだものだ。