2012年度のIT投資予算を2011年度よりも増やす企業は47.6%にとどまり、前年度の調査から11.5ポイント減った――。日経情報ストラテジーが企業のCIO(最高情報責任者)を対象に今年実施した、IT投資動向の調査結果である(詳細は6月号に掲載)。投資マインドはどうやら守りに入っているようである。

 減少の理由として大きいのが、投資が一巡したことのようだ。IT投資予算を減らす理由として「投資案件の一巡」が半数を占め、トップだった。逆にIT投資予算を増やす企業も、まんべんなく増やすわけではなく、領域を絞り込んで使うことを考えているようだ。前述の調査によれば、IT投資予算を増やすと回答した企業の3割超が「セキュリティ、リスク管理の強化」やクラウドコンピューティングなど「IT関連の新技術導入」には注力すると回答している。

 例えばプラスチック食品包装容器大手の中央化学は2012年夏をメドに、埼玉県鴻巣市の本社にあるサーバーをIT企業のデータセンターに移す。ファンケルは2012年3月に新たな顧客関係管理(CRM)システムを稼働させた。災害時の事業継続や競争力強化に直結する最新ITの導入には引き続きお金をかける傾向が見てとれる。

 今回の調査では「ITコンサルティングサービス」の動向についても調べてみた。情報システムのグローバル展開やビッグデータの活用など、これまでとはまるで違うノウハウが情報システム担当者に求められるようになってきている。そこに外部の知恵をどのように取り入れようとしているのかに興味があったからだ。

 調査では、およそ3割がコンサルティングサービスを利用していることが分かった。特定の企業が複数のコンサルティングサービスを使っている場合も多く、コンサルティングサービス利用企業68社に対して案件数は100を超える。

 全体的にコンサルティングサービスへの評価は高いものの、案件を個別に見ていくと、厳しい評価もいくつかある。自由意見欄には「コンサルタントの表現や言葉遣いが分かりにくい」「細かなニーズにはなかなか応えてもらえない」といった意見が並んでいる。あるCIOは「コンセプトはいいがメド感がない」とコンサルティングサービスに手厳しい。コンサルティング会社はゴールは示すが、ゴールにたどり着くまでの道筋は描けないという指摘である。

 うまく使いこなせないユーザー企業側にも問題はある。現役CIOやCIO経験を持つコンサルタントは「発注側が仮説を持つべきだ」という。大手人材派遣会社でCIOの経験を持つ老博堂コンサルティングの佐藤治夫代表は「競争力強化の可能性や実現に向けた仮説を持たない企業はコンサルタントと付き合ってもうまくいかない」と話す。カルビーでCEO(最高経営責任者)とCIOを兼務した中田康雄氏(現・中田康雄事務所代表取締役)も「(発注側に)明確なコンセプトがないと失敗する」と指摘する。

 中田氏はカルビー時代、大手ソフト会社が提供する、当時としては最先端の生産管理モジュールを導入しようとして頓挫した経験を持つ。うまくいかなかった原因は「特定のパッケージソフトの導入という手段から入ったため」と中田氏は分析する。

 外部の力を借りる場面はますます増えていくだろう。調査結果は、発注側の主体性が一層問われる時代が訪れていることを浮き彫りにしている。