毎年、4月の第一土曜日は京都で情報化研究会を開催すると決めている。今年は7日に京都駅前のキャンパスプラザ京都に30人が集まった(写真1)。統一テーマは「変えてやろう、ネットワークの世界」という威勢のいいものだ。この意味については、日経コミュニケーション5月号(2012年5月1日発行)のコラムに書いたので、ぜひお読みいただきたい。筆者以外に総務省大臣官房審議官の稲田修一さん、モルガン・スタンレーMUFG証券アナリストの津坂徹郎さんに講演して頂いた。
お二人の講演を思い切り要約すると、稲田さんの講演は「ITの目的が効率化・コスト削減から、情報を生かした新しい価値を創造すること、つまりイノベーションに変わった。それを実現するには技術よりアイデアが重要」が結論だ。津坂さんの講演は「3Gまではバラバラだった通信規格がLTEで初めて統一され、すごい勢いでグローバルな普及とハードウェアの低廉化が進んでいる。LTEは久々の革命」という内容だった。
さて、本論に入ろう。先日、日本情報システムユーザー協会で講演をした際に面白い質問をもらった。内線電話として使っている構内PHSを、無線LANで通話でき回線料金不要なスマートフォンに置き換えられないかというものだ。無線LANはスマートデバイスを導入するために整備を進めているという。PHSをやめてスマホを内線電話機として使えれば、無線LANとPHSという2種類の無線設備を持つ必要がなく、コストを抑えられる。また、スマホなら通話だけでなく、メールやスケジューラー、社内アプリも利用できて便利だ。
このことを情報化研究会のWebサイトに書いたところ、いくつかのアイデアがメールで寄せられた。その一つが、2011年12月に発売されたソニーの“Androidウォークマン”を活用できるのではないか、という案だ。
今回はこの話題をきっかけに「電話のアプリ化」と、そのために必要な「SIMフリー端末」について述べたい。
一筋縄では行かないAndroid端末
これまでの電話は、「電話とは特別な存在でコンピュータ通信とは違うもの」という考え方で作られていた。高価な電話機やIP-PBX、代表着信・転送・ピックアップといった電話特有の操作方法、それを10年でも100年でも変えずに守ろうとするのがレガシーなIP電話の世界だ。
それに対して「電話のアプリ化」とは、「電話なんてコンピュータアプリケーションの一つに過ぎない。ネットワークは回線交換でなくIPネットワークだけあればいいし、端末はスマホなら最高。別にパソコンでもテレビでもタブレットでも、好きなものに電話アプリを載せればいい」という考え方だ。
これからは電話のアプリ化がどんどん進む。そのほうが便利で安いからだ。SNSをはじめとするアプリとの連携が容易だし、ネットとつながる環境さえあれば基本料も通話料も要らない。
電話のアプリ化が進むには電話アプリ=ソフトフォンが簡単に作れたり、アプリのマーケットから入手できなければならない。Androidウォークマンは外観がスマホそっくりだが、マイクもスピーカーも裏面に付いている(写真2、写真3)。アプリはスマホ同様、Androidマーケットからダウンロードして使うことができる。Android用のソフトフォンを入手して搭載すれば「電話機」になるはずだ。