「SEが考えていることは常に正しい」。

 強い言葉である。この発言を聞いたのは1年半ほど前だが今でも記憶に残っている。

 SEとはシステムズエンジニアを指し、情報システムの企画、設計、開発、運用にかかわるすべての人を指す。企業の情報システム部門やシステム子会社にいるSE、メーカーやソフトハウスなどIT企業にいるSE、組織に属さずコンサルタントなどをしているSE、すべて含む。

 「SEが考えていることは常に正しい」とすると、「正しくないことを考えている人」がいるはずだ。

 それは「ビジネス側の人たち」である。情報システムを利用する人たちと言い換えてもよい。経営者、事業部門の長や部員、管理部門の長や部員、関連会社や取引先の経営者や社員、すべて含む。

 SEが情報システムを企画、設計、開発、運用していこうとすると、ビジネス側の人たちと意見が衝突することが往々にしてある。

 「会社を預かるものとして君の提案は受け入れられない。そこまでやることはない。第一、カネがかかりすぎる。会社の状況を分かっているのかね」。

 「仕事のやり方を変えろということか。何の権限があって言っている」。

 「その作業を事業部門がなぜやるのか。現場は忙しい。システムのことはそっちでなんとかしてもらいたい」。

 「端末が動かない、早く直してくれ。バージョンアップをしておくように連絡したはず? 知るか。カネを使うだけの君たちとは違い、こっちはカネを稼いでいるんだ」。

「SEの提案や意見は滅多に通らない」

 ビジネス側から何と言われようとも正しいものは正しい。もっとも「SEが考えていることは常に正しい」と明言した人はこう続けた。

 「ビジネスをもっと強くするために『こうしたらいいのではないか』と提案する。残念ながらSEの提案や意見は分かってもらえない。滅多に通らない。われわれSEの説明が下手なのか。ビジネス側が××(伏せ字)なのか」。

 ××(伏せ字)な人たちと押し問答をしていると疲れそうだ。しかしこの人は疲れを見せない。

 「40年近いSE人生で悔しい思いを何度もしてきた。まあ人生というものは『生きているだけで丸儲け』、いつでも何でもうまくいくわけではない。それでも時々はSEの考えが通る。嬉しいものです」。