社会保障と税の一体改革に取り組む政府が、制度の基盤として先行して整備を進めているのが社会保障と税の番号制度、通称「マイナンバー制度」である。

 番号制度を規定する「マイナンバー法案」は、すでに2012年2月14日に国会に提出され、審議を待っている段階にある。法案の正式名称は、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案」という。住民基本台帳法など、関連する27法律を改正する整備法案も同時に国会に提出されている。

 消費税率引き上げや解散・総選挙をめぐる与野党の思惑もあり、国会審議のスケジュールは見通しがきかないが、制度導入に向けた準備は着々と進められている。

 検討が最も進んでいるシステム要素が、「情報提供ネットワークシステム」と「マイ・ポータル」だ。前者は、法案前の大綱段階まで「情報連携基盤」と呼ばれていたもの。国の各種機関や地方自治体の間で個人情報を連携させる中核的な役割を担うシステムである。一方後者は、国民一人ひとりが行政機関内にある自身の個人情報の内容や参照履歴を確認したり、行政機関への手続きをインターネット経由で実行できたりするシステムだ。ともに、調達までは内閣官房が担当し、基本設計以降は総務省と共管することになっている。

 両システムの調達に関しては、2011年9月~10月にRFI(情報提供依頼)が実施され、並行して技術仕様などの検討が進められてきた。このRFIで集まった情報の一部が3月下旬に公開された。

RFIには19事業者が提案、本番は4社の争いか

 RFIに応じたのは全部で19事業者。基幹部分である(1)マイ・ポータルと(2)情報提供ネットワークシステムのほかに、(3)監査・監督を担う個人番号情報保護委員会の監視システム、(4)市町村などの情報照会者/情報提供者(大綱までの名称は情報保有機関)の接続システム、(5)コールセンター、(6)ネットワーク、(7)非機能要件、(8)システム構築条件の8分野に関する情報が集まった。

 19事業者のうち4事業者は、全8分野36項目中で30項目以上の情報提供に応じた。内閣官房は今回所管するシステムで“一本調達”を明言しているため、カバー範囲が広いこれら4事業者が本番の調達入札で争うことになりそうだ。調達手続きは当初、4月に入札を公告して6月中に事業者を決定する計画だったが、法案審議の遅れでスケジュールがずれ込んでいる。政府関係者によると、法案成立が5月だと調達は10月ころになる見通しである。構築事業者の決定は、年内ぎりぎりになるかもしれない。

 システム調達を1社に限定するのは、分割発注を採用した特許庁の基幹系システム刷新プロジェクトや厚生労働省の次期年金システムプロジェクトが頓挫しているからである(参考記事1参考記事2)。RFIの内容を有識者と議論した情報連携基盤技術ワーキンググループの会合では、座長代理の大山永昭東京工業大学像情報工学研究所教授が「企画と概念設計をきちんとやらないと手戻りが起こるのがこれまでの例。調達を分離するのがいけないのではなく、互いが見えないところで進めるのが失敗の原因」と指摘したが、内閣官房は「分割すると連携がうまくいかなくなる恐れがあるため一本調達で進める」ことをあらためて宣言した。