夜中、目が覚めると、部屋は真っ暗。照明のリモコンは手元にない。でも、大丈夫。
 「コンピュータ、電気つけて」
 部屋は明るくなったけど、予想外に肌寒い。それでも大丈夫。
 「コンピュータ、エアコンつけて」
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 SF映画の話ではない。こんな“未来”の部屋を、実際に作った人がいる。千葉県千葉市在住の「rti」氏は、音声認識によって家電やPCが動くシステムを昨年暮れに構築した。概要をブログで公開したところ、ネット上で話題になった。

 日経Linuxで、自宅のリアルなものを動かすという特集企画を進めていた筆者は、早速、自宅に伺った。

 rti氏の部屋で、制御できる機器は多岐にわたっている(図1)。窓一面につるした100インチスクリーンへPC画面を写し出す短焦点プロジェクター、ベッドで寝ながら眺められる液晶ディスプレイ、照明、エアコン、こたつ、電気毛布など。これらをすべて音声で制御できるのだ。

図1●rti氏の“未来”の部屋
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 音声認識ソフトは、Windows標準搭載の機能をベースにrti氏が開発した。ベッド近くに集音マイクを設置し、PCで音声を認識して、プロジェクターやPCアプリを制御する。エアコンなどの制御には、PCからコントロールできる市販の学習リモコンを使っている。

 ベッド上から何でも制御できる快適な部屋。快適すぎて、rti氏は、床ずれを起こしたこともあるそうだ。

 rti氏のように、身近なモノにこだわって、システムを開発する方に出会う機会が多くなった。趣味に終わらせず、ビジネスにつなげる話も多い。rti氏も実際に、今回のシステムをLinuxに移植して安価なハードウエアで動かし、学習リモコンとして商品化しようと取り組んでいる。商品化にあたっては、オープンソースの音声認識ソフト「Julius」を活用する(詳細は日経Linux 2012年5月号に掲載)。