中堅ITサービスのJBCCホールディングス(JBCCHD)が中国ビジネスを拡大させている。2008年11月に中国・大連に設立したJBCN大連を中核に、日系企業にクラウドサービスやERPソフトを売り込み、2011年度(12年3月期)の約2億円から12年度に約5億円、14年度に連結売上高の10%に一気に増やす計画を立てた。今期連結売上高(12年3月期見込み)が880億円なので、90億円超の規模と推測できる。

 同社にとって大きな挑戦となる目標だが、果たして達成可能なのだろうか。日系ITベンダーが中国市場で成功するには、越えなければならない壁がある。

14年前から中国ビジネスを手掛けていた

 JBCCHDは1998年、中国・大連のソフト会社ハイソフトと合弁会社を日本に設立し、中国のソフト開発会社を活用するオフショア開発を始めた。その後、様々な理由から合弁を解消し、グループ会社がオフショア開発を続けてきた。そんななかで、JBCN大連を立ち上げる一方、ハイソフト側の責任者だった李遠明氏が08年に設立した大連百易軟件(プレソフト)に10%弱を出資し、協力関係を結んだ。

 それから3年が経過したJBCCHDは、中国ビジネスの拡大チャンスとし、新戦略を練り始めた。

 まず営業拠点を拡充した。大連に加えて、09年11月に上海に現地法人を設立し、その出先を北京と広州に設けた。営業、SEを含めて約50人の体制になった。協力会社も各拠点に設けた。

 JBCN大連の小瀧栄一総経理は、「IBM中国、日本IBM、プレソフトなど中国の協力会社と一緒に日系企業のIT化を支援する」と意気込む。ハードやソフト、ネットワーク機器の販売、導入、保守のほか、運用監視などのサービスを提供する。IBMのiシリーズ(AS/400)環境を提供するクラウドサービス、生産管理と販売管理から構成する開発中のERPソフトの中国語版を年内にも販売開始する。中国企業には、プレソフトがJBCCの運用監視サービスSMACを売り込んでおり、大連銀行が導入するなど実績も出始めている。

中国人SEの育成は着実に進む

 オフショア開発も強化する。11年にその機能を日本から大連に移し、プレソフトやハイソフトなど中国の協力会社とのコミュニケーションを高めて、品質をさらに高める。

 実は、98年から中国人SEを日本に招へいし、ユーザー企業に常駐させるなどし、日本の商習慣などを体得させてきた。その人数は累計で約100人にもなったという。今も9人が日本企業で開発に取り組んでいる。JBCN大連の小倉輝久営業部統括本部長は、「日本に来て、日本のユーザーの声を聞いてもらうことが重要」と話す。ノウハウを積んだ人材が中国に戻り、日中の橋渡し的な役割も担う。

 小瀧総経理は「日本人は日本人、中国人は中国人と話し合いをしたほうが効果的である」と話す。例えば、ある日系企業の総経理の日本人が商談にOKを出しても、部長の中国人が「もう一度、見積もりを提出してほしい」と待ったをかけることがある。「他社のほうが安い」となり、商談を失うこともあったという。そんな事態を避けるためにも、当初の段階から中国人同士で交渉してもらうようにする。