2月24日、ほぼ半年ぶりに札幌で講演をした。半年しかたっていないが、講演に使用するスライドは50%以上、新しいものになっている。講演の目玉にしたのは前回の札幌講演をきっかけに生まれた「ツルハ・モデル」(関連記事)と、iPadアプリを1000本導入いただいたお客様で導入効果を評価するために取ったアンケート結果だった。

 ネットワークの場合は、コスト削減や帯域幅の増大といった導入効果を数字で表すのは比較的簡単だ。しかし、iPadアプリの導入効果を金額で表すとなると単純ではない。アンケート調査をしたお客様の話を伺うと、むしろ金額換算できない効果の方が重要ではないかと思われた。

 今回はiPadをはじめとするスマートデバイスの導入効果をどう評価すべきかについて、札幌での講演で話した内容を紹介したい。

評価の定番は時間とペーパーレス

 筆者は「ワークスタイルの変革」という言葉が大嫌いだ。数年前に話題になったものの普及しなかった、ユニファイドコミュニケーションの事例が嫌いになった理由である。プレゼンスやIM(Instant Messaging)で不在の人に対する電話がなくなって電話の取り次ぎなどの時間を節約でき、年間で憶円単位のコスト削減ができた、といった事例が紹介された。なんだか無理があるし、そんなものがワークスタイルの変革なのかと思ったものだ。具体性の乏しい効果を認める気にはなれない。

 だが、「時間」はスマートデバイスの導入効果の評価基準として有効だ。業務単位での効率化や働き方の改善で具体的な効果を上げている。

 業務単位の事例では、中古車販売のガリバーインターナショナルが手書きメモやFAXを利用していた受付業務をiPadで効率化した例が知られる。働き方の改善は筆者のお客様に好例がある。費用やセキュリティ確保の難しさから、これまで営業担当者にパソコンを持たせていなかったこの会社は、iPadをワークスタイル改善と効果的なプレゼンのために使わせることにした。

 勤怠システムに出社時刻や退社時刻を入力したり、得意先からのメールをチェックするため、これまでは営業に出る前後に必ず会社に来なければならなかった。iPadでメール、スケジューラー、勤怠をはじめとする社内システムを外出先で使えるようになったため、直行直帰で営業活動ができるようになった。これで1人当たり約10時間/月の時間が節約できたという。

 もう一つの分かりやすい尺度は「ペーパーレス」だ。米国の航空会社ユナイテッドコンチネンタルホールディングスは昨年、傘下のパイロット1万1000人にiPadを配布し、1人当たり17キログラムのマニュアルを電子化し始めた。これにより、年間約1600万枚の紙を節約でき、軽量化で燃料を約123万リットル減らせるという。

 それだけではない。パイロットが使うマニュアルやチャートは28日周期で更新される。パイロットは更新されたページを差し替えるために膨大な手間がかかっていたが、電子化されれば一瞬のダウンロードで済む。ペーパーレスは時間の短縮にも役立つのだ。