NECでプラットフォームBU(ビジネスユニット)長を務める山元正人執行役員常務が3月上旬、ビッグデータ関連のハード/ソフトを整備し、データ分析・加工などをSaaS形態で提供する計画を明らかにした。ITプロダクトの総責任者である山元常務がなぜ、クラウドサービスに踏み込んだ発言をするのだろう。

 2011年度に約1000億円の赤字に転落する見込みのNECは、ITサービスと社会インフラ、キャリアネットワークに成長の活路を求めることにした。その一環から、「ITプロダクトは従、主はITサービス」(山元常務)という方針をとる。効果的なITサービスを創り出すためにITプロダクトを作る、というわけだ。

 ビッグデータ事業の推進にあたっては、基礎層(基盤ミドルウエア、サーバー、ストレージ、ネットワークなど)、収集・統合層(データベースなど)、分析・メディア解析層(ルールエンジン、テキスト解析、統計解析、データマイニングなど)の3層に、必要なITプロダクトを用意する。自社だけではユーザーが望む最適な環境を整えるのは難しいので、他社からも調達する。ただし、「世の中にない場合は自社開発する」(山元常務)。データ量の増加に応じて、柔軟に拡張可能なデータベースソフトInfoFrame Relational Storeはその一つになる。差別化も図れる。

ITプロダクトでの弱気は、ITサービスの弱体化にもつながる

 加えて、個別案件からデータ分析・加工の業種別パターンを見つけ出し、SaaSへと進化させる。プラットフォームBU内に立ち上げたビッグデータ戦略プロジェクトがそれを担う。業種別の営業やITサービス、研究開発など各BUから約50人の精鋭を集めて、ビッグデータ事業の推進に必要なサービスやソリューションの開発にあたる。

 データ分析、加工の専門家も育成する。現在、分析スキルなどに長けた人材は100人程度いるが、3年間で約200人に増やす。ビッグデータ関連売り上げも、2011年度の400億円弱から3年後に4倍の約1500億円にする。山元常務はビッグデータ分析の急速な普及を確信し、SaaSメニューの整備を急ぐ考えなのだ。

 だが、NECは数値目標を公表するが、達成困難な状況になった際の対応策が後手に回ることがある。「責任が明確になっているのか?」と思えるときもある。

 山元常務は昨年2月、プラットフォームBUの売上高を2012年度に4100億円とし、営業利益率5%を目指すとした。赤字拡大などによって、NEC全体では中期経営計画(2012年度に売上高4兆円、営業利益2000億円などとする)を見直しているようだが、ITサービスを支えるITプロダクトで弱気になったら、ITサービスの弱体化にもつながりかねない。ここはプラットフォームBUの踏ん張りどころだ。ビッグデータのような成長分野を2つ、3つ探し出し、サービス商品とプロダクトを迅速にそろえていかねばならない。NECの成長はそれにかかっている。