この連載では、「ダメに見せないことで評価を高める」ための仕事術を扱っている。前回まで、ネガティブ特性の八つめである「説得力がない、納得感が得られない」について説明した。ネガティブ特性は以下の通りである。

  1. 先を読まない、深読みしない、刹那主義
  2. 主体性がない、受け身である
  3. うっかりが多い、思慮が浅い
  4. 無責任、逃げ腰体質
  5. 本質が語れない、理解が浅い
  6. ひと言で語れない、話が冗長
  7. 抽象的、具体性がない、表面的
  8. 説得力がない、納得感が得られない
  9. 仕事が進まない、放置体質
  10. 言いたいことが不明、論点が絞れない、話が拡散
  11. 駆け引きできない、せっかち、期を待てない

 ビジネスパーソンの生活、人生にとって「仕事」は非常に大きな要素を占めている。この大事な要素である「仕事」が思うとおりに進まないというのは、非常に大きな問題であり、ストレスの原因になる。だから確実に解決すべきだと筆者は考えている。

 そこで、今回からは、筆者が研究している「ヒューマンマネジメント」のうち、「仕事が進まない」状況と「仕事を放置する=放置体質」状況について説明する。これは、11のネガティブ特性のうち、九つめにあたる。

「仕事の進捗が悪い」二つのパターン

 「仕事が進まない」、「仕事を放置する」はどちらも「仕事の進捗が悪い状態」という意味では同じであるが、本質面で大きく異なっている。この違いは「仕事に取り組む意識、意欲、認識」といったものだと筆者は考えている。

 「仕事が進まない」は、「自分では仕事を進めたいという前向きな気持ちはあるけれども、何らかの理由で仕事が進んでいかない」という状態と筆者は定義している。つまり、「やる気があるけれども、さまざまな理由で仕事の進捗が悪い状態」ということだ。

 このケースは非常に単純で対処もしやすい。「本人に仕事を進めようという意欲」があるのだから、進捗が遅れても本人だけでなく上司、周囲の関係者も認識しやすいからだ。この結果、比較的早い段階で、上司など周囲の人も一緒に「仕事が進まない理由」を把握し、課題を解決できることが多い。

 このように、「仕事の進捗が悪い」という本人の自覚があれば、上司や周囲の関係者が「進捗遅れ」を早期に把握することができ、結果、組織としてのマネジメント面では大きな問題にならない。ある意味、正常な「進捗遅れ」状況だと考えることができる。

 次に、「仕事を放置する=放置体質」を考えてみよう。筆者の定義では「仕事の進捗が悪い」という状態は、「仕事が進まない」と同じであるが、このネガティブ特性には「(意識的および無意識な)仕事を進める意欲の低さ、無さ」という特徴がある。

 つまり、本人が「仕事を意図的に放置しよう」と思わない場合でも、結果的に仕事が放置されてしまう状況になるのが、「仕事を放置する=放置体質」の特性である。ここで重要なのは、本人が「放置している意識がない」場合であり、この処置が重要である。

 本人が何らかの理由で、意図的に仕事を放置したり、忙しすぎて手が回らなくて物理的に放置される場合は、上司や関係者も遅れに気付くので対処はさほど難しくはない。問題は、本人が意識なく放置してしまうケースである。

 本人には放置しているという意識がないから、仕事の進捗がドンドン遅れる。さらに「進捗遅れの意識がない」から、上司やチームへの報告も積極的になされない。この結果、上司やマネージャの「進捗遅れ発見」も遅れ、酷い状態になる。