テーブルにセットされたオレンジのホーロー鍋を電球色のライトが照らし、着席した男女6人の顔を柔らかい光で包み込む。「これほどの顔ぶれが揃うとさすがに緊張しますね。では、そろそろ始めましょうか」。それまでのリラックスした空気が司会者の言葉でにわかに引き締まる。東京・六本木にある人気飲食店の一室、2月8日午後6時32分頃のことだ。次の瞬間、スマートフォン業界注目の座談会の一部始終が、インターネットに配信され始めた。

 「ビッグ5が激論!スマホの『今』と『これから』」と題するこの座談会は、ITproが主催するAndroidアプリ開発者向けイベント「Android Application Award 2012」(A3 2012)の活動の一環として企画された。前回開催の「A3 2010-2011 Winter」からわずかに1年。だがケタ違いの普及台数や製品の膨大なバリエーション、海外メーカー製品の台頭など、日本のスマホ市場はあらゆる面で一変した。そうした激動の時代に直面した今、企業や開発者たちは目下の動向をどのように捉え、今後の開発にどう取り組んでいくべきか。ますます複雑化するこれらの問題について視聴者と共に語り合おうと、iPhoneとAndroidの垣根を超えて5人の気鋭が集結したのである。

 参加者を紹介しよう。プランナーとして数々のスタートアッププロジェクトに参加し、iPhone/iPad関連のイベントやアプリのプロデュースも手がけるモバイル表現研究所の加賀谷友典氏、そしてiPhoneアプリや関連アクセサリーなどをレビューするサイト「AppBank」代表の村井智建氏に参戦して頂いた。

 また技術的見地から意見を聞くため、XboxのKinectコントローラーをハックしてAndroidを接続したことで海外メディアに紹介されたSIPropのハッカー、hirotakasterこと新里祐教氏をお呼びした。さらに個人で550万ダウンロード突破という記録を持ち、iPhoneアプリとAndroidアプリの開発者である立花翔氏も参加した。全体の進行役は、端末セットアップなどAndroid関連の最新情報をmamononewsの名で発信、スマホのプリインアプリ等の企画開発にも携わるマモノ氏にお願いした。

 この5人だけでも相当に“濃い”面々なのだが、今回はさらに特別ゲストを招待した。経済評論家の勝間和代氏である。実は同氏はモバイルデバイスに関して「超」の付くヘビーユーザーだ。トークが始まるや否や「自宅にはパソコンだけでなくiPhoneやiPad、Androidを入れて20台ほどの端末が転がっている」と明かし、ツワモノ揃いの参加者達を驚かせている。

 現在のスマホが抱える課題や将来の姿について議論する――。少々重たいテーマに向き合った参加者達は、軽妙なトークを繰り広げつつも独自の持論を応酬。その全容はUstream.tvのA3ITpro公式チャンネルで誰でも視聴できるが、ここでは筆者が特に興味を引かれたトピックをいくつか紹介したい。具体的には(1)国内のスマホ市場はどのように変遷してきたか、(2)スマホを持つことで本当にライフスタイルは変わるのか、(3)開発者にとってAndroidとiPhoneはどう違うのか、(4)3年後のスマホはどうなっているか、などである。