IT企業のSEマネジャは昼夜を問わず頑張っている。顧客のため、ビジネスのため、そして部下のために頑張っている。特にSEマネジャになったばかりの数年間は、しゃにむに頑張る。だがSEマネジャの中には、知らず知らずのうちに「ITを知ったかぶり」したり、「営業の言いなり」になったりする人が少なくない。また3、4件以上の顧客を持つSEマネジャは「1、2件以外の顧客を放ったらかし」にするようにもなる。よほど心しておかないと多くのSEマネジャがそんな仕事のやり方に陥ってしまう。前回は、それについて述べた。

 読者の皆さんの中にも「〇〇マネジャはそんな感じだ。△△もそうだ」などと感じている方が少なくないと思う。SEマネジャ稼業はそれだけ難しい。心当たりのあるSEマネジャの方は、ぜひ頑張ってほしい。

 またSEマネジャを目指しているSEの方も、将来自分がそうならないように今から精進してほしい。そこで今回は、SEマネジャだけでなく、多くのSEがシステム開発プロジェクトなどで「陥るもの」について述べてみたい。筆者の経験からして、代表的なものが2つある。SEマネジャやSEがこれらに陥るとプロジェクトはうまく行かなくなり、場合によってはプロジェクトが大赤字になる。以下それについて述べる。

(1)大規模プロジェクトも頑張ればできると考える

 SEマネジャやSEが陥りやすいことの1番目は、中小規模のプロジェクトの経験しかないSEマネジャやSEが、大規模プロジェクトを行う時の問題である。SEマネジャやSEがそれに陥って大問題を起こしたケースはIT業界では少なくない。そして顧客に大迷惑をかけ、だいたいは大赤字になっている。具体的には、「中規模のプロジェクトでプロジェクトマネジャを経験したそれなりのSEなら、大規模プロジェクトも頑張ればできる」という考えに陥ることである。

 「中規模のプロジェクトを経験したのだから、大規模プロジェクトも頑張れば何とかできる」という考えは一見正しいように思われる。だが、「頑張ればできる」という精神論だけではプロジェクトはうまく行かない。

 こういう考えに陥っているSEマネジャやSEはIT業界では少なくない。そして彼ら彼女らがプロマネをやると、そのプロジェクトは相当な確率で問題を起こす。例えば、300人月のプロジェクトの経験しかないプロマネが1500人月、3000人月のプロジェクトをやると大体そうなる。事実、それで苦しんだIT企業やプロマネは少なくない。

 それは300~500人月くらいまでのプロジェクトなら、プロジェクトメンバーが頑張れば何とかできる。だが、300~500人月を超えるプロジェクトになると、メンバーの頑張りだけではそうは行かないからである。プロジェクトというものは大規模になればなるほど、要件定義、外部設計、内部設計などの工程をきちっとやらないと後工程で手戻りが発生するものだが、中小規模のプロジェクトしか経験していないプロマネだと、この感覚が乏しい。

 そして大規模プロジェクトで大きな手戻りが発生してしまったら、SEを増員しても収拾がつかない。結局は経験のあるプロマネを投入して、一からやり直すことになる。きっと読者の中にもそんな苦い経験をした人がいると思う。

 言うまでもなく、大規模プロジェクトはビッグビジネスである。プロマネを決める時には上層マネジメントも絡む。だが、よほどプロジェクトに強い上層マネジメントでないと、SEマネジャやプロマネが「頑張ればできます」と言う同意する。それだけSEマネジャやプロマネの責任は重い。

 したがって、大規模プロジェクトの経験がないSEマネジャやプロマネは、そんな時「頑張ればできる」と思わないことだ。人によっては「大きなプロジェクトをやってみたい」という意欲を持っているかもしれないが、それは厳禁である。そして、大規模プロジェクトの経験者に相談して意見を聞き、「こうすればできる」という体制やプロジェクトのやり方を上層マネジメントに提言することが必要だ。そうでないと顧客や会社に“大迷惑”をかけることになる。