東京電力が、大口顧客向けの電気料金を値上げすると発表した。この発表自体が議論を呼んでいるが、原子力発電所の稼働状況を鑑みれば、今後は全国的に電力料金が値上げされる可能性がある。企業にすれば、2011年夏にピークカットで経験したような節電策を、年間を通して実施しなければならない。継続性を確保するためには、何らかの仕組みが必要だ。ICT業界には、今こそ種々のデータを活用したソリューションの開発・提案が求められている。

東電案では年間5000万円弱のコスト増も

 東日本大震災の発生から間もなく1年が過ぎようとしている。同震災に伴う原子力発電所の事故を受けて、電力を潤沢に使えた時代は終わり、電力不足あるいは電力価格高騰の時代が始まろうとしている。事実、東電は1月に、この4月から契約電力500kW以上の顧客を対象に平均17%料金を値上げしたいと発表した。

 この値上げに対しては、値上げ幅の算出根拠があいまいなどとして、企業や自治体などが不満の声を上げている。しかし、原発停止による不足電力を他の発電方式で補ってはいるものの、燃料費の負担が小さくないことを考えれば、値上げ幅は別として、電力料金が今後、これまでより高くなる可能性は否定できない。

 電力料金の値上げは、電力使用量が大きな企業ほど、その負担は大きくのし掛かってくる。例えば、東電の値上げがそのまま実施されたとすれば、大規模事業所では年間5000万円弱、中小規模事業でも年間100万円強のコスト上昇になる。5000万円という金額は、「昨夏のピークカット対策で実施した節電効果が相殺される」と憤りを隠さない事業者もあるという。

 “高い電気代”の回避策には、調達改善と運用改善の二つがある。前者は、自家発電やPPS(特定規模電気事業者)の活用など、より安価な電力を調達する方法だ。一部のメディアでは「脱東電」といった見出しで紹介されてもいる。後者は、照明や空調、オフィス機器など電力消費機器の使用方法を見直す方法である。

 運用改善では、昨夏の節電対策がその一例になる。しかし、昨夏の節電対策は、準備期間も限られたし、「まずは夏を乗り切れれば」といった理由から、現場の運用に委ねるなど、一過性の取り組みで終わった企業も少なくないはずだ。現場の生産性への影響も指摘されている。今後は、そうした節電策に継続性を持たせるとともに、現場への影響を最小限に抑えることも考慮しなければならない。

情報サービス業界はITを使った省エネ促進を要望

 こうした状況下で、ITサービス会社の業界団体である情報サービス産業協会(JISA)は2月7日、経済産業省に対し、「今後の電気事業制度に関する要望書」を提出した。電力料金のコスト抑制と、ITを使った省エネの推進を求めるものである。

 具体的には、電力コストの抑制では、電力料金算出の根拠になっているコスト構造の透明性を図ることと、PPSなど電力供給者の新規参入を容易にすることを求めている。省エネ推進では、BEMS(ビル・エネルギー・マネジメント・システム)やHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)など「Green by IT」と呼ばれるITを使ったサービスの啓蒙と、省エネ型データセンターへの移行促進に向けて政策を要望する。