NECの遠藤信博社長は2012年1月26日、人員削減を含めた事業構造改革(リストラクチャリング)を発表した。外注を含め国内で7000人、海外で3000人を削減する一方、ITサービスとキャリアネットワーク、社会インフラを軸とした事業構造にするという。2012年度に売上高4兆円、営業利益2000億円を骨子とする中期経営計画の目標達成が困難になってきたからだ。

 NECの連結売上高はかつて5兆円あったが、いまや3兆円を割り込む寸前になっている()。縮小均衡から脱するために、遠藤社長はどんな策を打ち出すのだろうか。

図●NECの業績の推移(連結)
図●NECの業績の推移(連結)

NECが新たな事業構造改革へ

 NECの社長はこの10年間に、西垣浩司氏(故人)、金杉明信氏(故人)、矢野薫現会長、そして2010年4月に遠藤氏へと交代した。一般論だが、社長の在任期間が3年から4年と短い場合、経営が短期志向になりやすい。経営が苦しい企業では、研究開発など費用を抑えて借金返済に走る傾向がある。目先の利益確保を優先するからだ。

 矢野会長も社長時代、「社内が超短期志向になり、成長の限界にぶつかっている。その日暮らしになり、ストラテジーが出てこない」とし、長期ビジョンを策定した。その方向に沿って、中期経営計画の作成にあたったのが遠藤社長らである。

 NECは2008年度に営業赤字に転落した際、人員削減や給与カットなどを含む固定費削減を徹底的に進めた。経営の3本柱(コンピュータ、通信、半導体)の1つである半導体事業を非連結化し、グローバル事業とクラウド事業、新規事業の拡大で再生を図ろうとしている。だが、景気低迷などが加わったこともあり、業績低迷に歯止めをかけられなかった。

 そこで、遠藤社長は再び事業構造改革を決断し、コンピュータ事業についてはITサービスへとシフトさせるという。価格競争が激化するサーバーなどのプロダクトより、利益率の高いシステム構築・運用などのITサービスに力を注ぎたい気持ちは理解するが、システム・インテグレータを目指すということなのだろうか。

サービス化は正しい選択? プロダクトに回帰する欧米ベンダー

 システム・インテグレータが主戦場にする国内のSI市場は縮小傾向にある。有力システム・インテグレータの業績は低迷しており、人員削減も始めている。その市場に活路を求めていくのは難しいので、「クラウドに賭ける」となるだろうが、もしクラウド基盤を欧米ITベンダーのプロダクトに頼る戦略なのだとしたら、展望は開けないだろう。メーカーとして生き残りたいのなら、自社プロダクトにこだわるべきではないのか。メーカーとしてのサービス事業が成り立つのは、強力なプロダクトがあってこそだという点を忘れてはいけない。