前回説明したように、いくつかのことを諦めてしまえば、オープンソースにしてしまうことで困ることはありません。また、「いくつかのこと」についても、それを補って余りあるメリットがありますから、零細企業(開発者)がオープンソースにしない手はないと言っても良いと思っています。個人的にはオープンソース化は「コストの低い知財対策」だと思っています。

 確実に売れるソフトウエアだとわかっていて、かつ売る能力があって、維持やサポートが自力でできるのであれば、プロプライエタリにしておくという選択もあるでしょう。しかし、それらのどれもが十分でない場合、ソフトウエアはオープンソースにしてしまって、他で稼ぐ方法を考えた方が、今の時代はマネタイズしやすいと思います。「おたま」のように爆発的に売れることを前提にしていない分野のソフトウエアなら、あるいは高いライセンス料を取ることによって、量販しなくてもそこそこの金にすることは不可能ではないかも知れませんが、コンシューマなソフトウエアの場合、そうそう高いライセンス料は取れません。逆にサポート費用が嵩んでしまって、サポートを有償にしなければ赤字というようなことは起きかねません。でもサポートを有償化できるのであれば、ライセンス料は取らなくても良いかも知れません。であれば、オープンソースにしてしまえば、いろいろ楽になります。

 というわけで、基本的にはオープンソースにするのは是だと思っています。

 ところが、ライセンスビジネスを行いつつ実際にオープンソースにするとなると、別のリスクが発生します。これらのリスクを考えると、「ふつーオープンソース」と言っている私ですら躊躇してしまいます。具体的には、

・権利関係の処理
・プロジェクト管理
・公開されていることそれ自体

 といった問題です。また、これらの問題は、ライセンスビジネスをしなくても、オリジネータであることに拘わるのであれば、多かれ少なかれ意識しなければならない問題です。