筆者は先週、国家試験を受けた。試験中は時間配分がうまくいかず、あわてる場面があったが、終了直後の脳内自己採点は8割前後とそこそこの出来。合格基準が6割なので「たぶん合格」と思わずほくそ笑む――ことはなかった。なぜなら、ほくそ笑む前に「結果は800点(1000満点)」と知らされたからだ。

 受験したのはITパスポート。情報処理推進機構(IPA)が実施する国家試験「情報処理技術者試験」の一つで、すべての社会人が備えておくべきIT能力を測る試験とされる。経済産業省が策定した職種別のIT能力の目安を示す「ITスキル標準」で、最下位のレベル1に位置付けられる。

 今回、筆者がITパスポートを受けたのは、日経NETWORK 2012年2月号の特集で「CBTで取得するITパスポート」という記事を執筆したからだ。ITパスポートは、企業のシステム担当者が取るべき資格として今注目を集めている。それは、IT分野に限らない幅広い知識や能力を問う試験だからだ。この特集では、ITパスポートの試験の概要や受験にあたっての心構え、効率的な学習方法を紹介している。

 筆者はこの記事を執筆する前に、ITパスポートを受験したかった。しかし、受験したのは雑誌の印刷が終わった1月25日。詳しくは後述するが、ITパスポートでは出題された問題が繰り返し使われる。そのため、問題を漏洩させないことを誓約させられる。執筆する前に受験してしまうと、記事に書いた内容によっては外部に問題を漏洩させたと指摘される恐れがあったので、遅らせた。

 実際に受験してみると、ITパスポートで採用したばかりの試験方式「CBT」に惑わされる点があった。そこで、CBT方式の概要と日経NETWORKの特集記事で書けなかったITパスポートの受験体験記、そのときに気付いた攻略ポイントを紹介する。

CBTなら受けやすく、結果もすぐわかる

 ITパスポートは、2011年11月に試験制度が変わった。その目玉が、CBTという試験方式の採用だ。試験結果がその場でわかったのは、CBTになったからだ。

写真1 CBTの受験イメージ。IPAのホームページからダウンロードできる疑似体験ソフトウェアのもの。
写真1 CBTの受験イメージ。IPAのホームページからダウンロードできる疑似体験ソフトウェアのもの
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 CBTとは、コンピュータ・ベースド・テスティングの略で、パソコンを使って試験を実施する方式を指す。ITパスポートでは2011年9月まで、春と秋の年に2回、マークシート方式のペーパーテストを実施していた。新しく始めたCBT方式では、ディスプレイに表示された問題文を読み、答えをマウスで選択して解答していく。IPAのWebページでこのCBTの疑似体験ソフトウェアを公開しているので、試験前に操作に慣れておくことができる(図1)。

 CBTに変わって良かったのは、(1)ほぼすべての都道府県で毎月試験が開催されるようになり、受験機会が増えたこと、(2)結果が試験終了の数秒後にわかるようになったこと――だ。ペーパーテストでは、すべての受験者が開催回ごとに、決められた時間に同じ問題の試験を受けていた。CBTでは、IPAが試験の問題を数百問用意して、そこから100問を抽出して試験を行う。この運用方法にしたことで、パソコン施設がある全国の試験機関が、頻繁に試験を実施できるようになった。また試験結果がその場ですぐわかるのは、解答用紙をスキャンする必要がなくなったからだ。