IT業界のSEマネジャ稼業は難しい。どこのIT企業にもいろんなSEマネジャがいる。顧客をよく訪問する人、会社にばかりいる人、技術に強い人、必ずしもそうでない人、営業に強い人、そうでない人、部下に仕事を任せる人、任せない人など様々である。

 そしてSEマネジャ全員が全員、部下のSEや営業に信頼されているかというと、必ずしもそうではない。あえて言えば、部下からは「〇〇マネジャは技術を知らない。顧客を知らない。営業の言う通りにする。細かい」などと陰口をたたかれたり、営業からは「ビジネス意識が薄い。顧客を訪問しない」などと評されたりするSEマネジャの方が多いように思える。もちろん、しっかりしたSEマネジャはいるが、筆者の経験から言うと、その比率はそう多くはない。

 それはなぜか。筆者が考えるに、SEマネジャという仕事には多くのSEマネジャが陥りやすい「SEマネジャ稼業特有のもの」があるからだと思う。

 SEマネジャの多くは、リーダークラスのSEの時に上司から突然「SEマネジャ」に任命される。そして彼ら彼女らは、「よし、しっかりやるぞ」と張り切って一生懸命仕事をやる。部下のSEが行なうシステム開発・販売支援などの指導や管理、顧客対応、人事労務管理、パートナー手配、コンプライアンス事項の管理など諸々のことを懸命に行う。そしてビジネス目標達成と部下の育成に向けて邁進する。

 だが、SEマネジャ稼業には多くのSEマネジャが陥るものが“3つ”ある。それに陥ってしまうと、部下や営業にそっぽを向かれ往々に頼りにされなくなる。それで多くのSEマネジャが苦労している。

 今回はこの3つのものについて述べる。SEマネジャはもちろん、SEマネジャを目指している中堅以上のSEの方はぜひ参考にしてほしい。そしてSEマネジャを目指している方は、将来、部下のSEや営業に頼りにされるSEマネジャになれるよう、今から精進してほしい。なお、「SEマネジャ」の定義は会社によって異なると思うが、ここでは「何人かのSEを直接抱え、彼ら彼女らのジョブアサインや目標設定や人事評価を行う人」を意味する。

SEマネジャが陥ること(1)自分が知らない技術を知ったかぶりする

 SEマネジャの部下のSEはいろんな仕事をしている。提案活動、インフラ構築、アプリケーション開発、ネットワーク構築など多岐にわたる。するとSEマネジャは必然的に数多くのシステムやIT製品に関わることになる。メインフレーム、サーバー、PC、各種モバイルデバイス、ネットワーク、クラウド、インターネット、Web、データベース、各種のOS、言語、アプリケーションソフト、様々なパッケージソフトなどなど、SEマネジャが関わるシステムやIT製品は実に多い。

 また一つの製品でもバージョンが変わる。新製品もどんどん出てくる。部下の数や顧客数が増えるほどその数は増える。数え方にもよるが、きっとその数は数百になるだろう。その上、アプリケーションや開発手法、プロジェクト管理などもある。SEマネジャはそんな世界で日頃部下と技術的な話をすることになる。

 とは言え、SE時代に自分の経験したシステムやIT製品などについてはSEと“技術的に突っ込んだ話”ができるが、未経験のものとなるとなかなかそうは行かない。部下が話すIT用語の意味が分からないことさえある。それでも部下の相談に乗ったり部下を指導したりしなければならないし、トラブル時には正しい状況判断や適切な対応をしなければならない。