年末から年初にかけて、政府・与党の社会保障改革本部は「社会保障・税一体改革素案」をどうにか取りまとめ、閣議で報告した。少子高齢化に伴う社会保障費の増大や、長引く景気低迷による税収減で、危機的な状況に陥っている財政を健全化するため、消費税の社会保障財源化など、社会保障と税の仕組みを一体的に見直す内容である。消費税率については、現行の5%を2年後の2014年4月1日に8%へ、その1年半後の2015年10月1日に10%へと段階的に引き上げる。

 与党内での素案の取りまとめに際しては、離党者が出るほどの騒ぎになった。政府は今後、与野党協議を経て、2011年度中に大綱化から法案化へと推し進める考えだが、自民党などは協議を拒否する構えであり、前途は波乱必至である。

 “本丸”である社会保障・税一体改革の法案化の行方が見通しにくい中にあって、もうひとつの重要な法案の国会提出準備は着々と進んでいる。番号制度に関する、通称「マイナンバー法(案)」である。正式名称は「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(案)」といい、内閣府が所管する。2月上旬までに閣議決定し、住民基本台帳法や商業登記法などの関連法令の改正案(マイナンバー法整備法案と呼ぶ)とともに、次期通常国会に提出する段取りを描いている。

 番号制度は、一体改革素案の中でも「給付と負担の公正性と明確性を確保するためのインフラ」として「早期導入を図っていかなければならない」と、高い優先度が与えられている。具体的には、医療・介護・保育などの社会保障に関して世帯単位で支出額の上限を設ける「総合合算制度」の実現基盤とするほか、控除額が算出税額を超える世帯に対しては現金を支給する「給付付き税額控除」や、個人住民税を前年収入ではなく当年収入から算出する「現年課税化」などにも活用していく方針である。もちろん行政事務全般の効率化の効果も見込んでいる。

 マイナンバー法案の国会提出が近づくにつれ、制度導入のスケジュールなどがより具体的に明らかになってきている。年末から年初にかけて新たに判明した点を中心に最新の状況を概観してみよう。