IT関連技術の知識や活用法について、いつどのタイミングで何をどのくらい教えていったらいいかという“さじ加減”が分からない――。記者が今、真剣に悩んでいるのがこのトピックである。対象となる相手は、現在6歳の長女だ。今年の4月から小学校に通い始める予定となっている。

 記者は仕事柄、IT関連の技術や情報を人に伝えるのは得意である。日々の仕事としてニュース記事や技術解説系コラムを執筆して読者に読んでもらっているのはもちろん、「IT技術に詳しそう」ということで、知り合いなどにレクチャーを頼まれる機会もよく訪れる。嬉しくはないが、親類縁者のパソコン関係のサポート業務もだいたい記者にお鉢が回ってくる。

 そんなわけで、学校の先生レベルとまではいかないだろうが、小さい子供から大人まで、どんな年齢層や知識レベルの相手にも分かりやすく噛み砕いて様々なIT関連技術を教えられる自信がある。だが、単発の講座として何かを教えることと、長い長い人生のコースにおいて教え続けて人を導くということは、まったく別次元の話である。記者にはそんな経験はないし、うまくやり切れる自信もまだない。

 「6歳の子供を相手にIT関連技術の教育で悩むなんて早すぎるだろう」という意見を唱える人もいるかもしれないが、記者の考えは異なる。本人にやる気さえあれば、IT関連の知識を教えるのに年齢が低いから早すぎるということはないはずだ。むしろ、教えないことによって、どこかから誤った知識や使い方を見よう見まねで中途半端に覚えてしまう方が記者にとっては怖い。IT関連の知識やリテラシーの欠如などを原因とする最近のネット事件を見るにつけ、そうした思いは日増しに強くなっている。

 勘違いしてほしくないのは、記者は別に「IT万能主義」を掲げる人間ではないということだ。IT技術を使いこなせることが人間の幸せに直結するなどとは、みじんも思っていない。むしろ何でもかんでもITで解決しようというスタンスを見ると違和感を感じる方である。2011年末から2012年始めにかけて、記者はあえてパソコンにもスマートフォンにもほとんど触らずITから切り離された生活を送ってみたが、時間がいつもよりゆったりと流れるように感じてなかなか心地良いものだった。ITはただの道具あるいは手段に過ぎず、それ以上の何物でもない。

ITに強くなってもらいたいが全面依存はさせたくない

 とはいえ、現代に生きる以上、IT関連技術を学び使いこなせるようになることは、やはり非常に重要である。例えば、記者は現在、ネットオークションで格安で購入した企業向けルーターを使ってルーティングプロトコル(インターネットでパケットを中継するために使われる技術)などの勉強をしている。

 必要なコマンドマニュアルはメーカーのWebページからダウンロードしてPDFで見られるし、設定事例も検索すればいくらでも調べられる。それでも分からないことがある場合、掲示板やSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)で質問をすれば、すぐに誰かが教えてくれることも多い。記者が子供のころにはありえなかった圧倒的な便利さが、ITを活用することによって現実に得られる時代となっている。

 こうしたメリットは痛いほどよく分かるのだが、小さい子供にこれらをいつどのようにどう教えていけばよいのかがとにかく難問である。例えば情報の検索方法について教える場合、まずは紙の百科事典などで調べることをしっかりと教え、その後ネットでの検索方法をパソコンの使い方と併せて教えていけばよいのだろうが、そのさじ加減が分からない。

 IT万能主義ではない記者にとっては、何でもネットでちょちょいと調べてハイおしまい、という子供になってもらうのは困る。ネット上には誤った情報や好ましくないコンテンツもあるし、人類の英知がすべて格納されているわけでもない。紙などでしか得られない情報や、ネットをあまり使わない記者の親の世代から口伝でのみ教わるような情報はごまんとある。それでもITにはなるべく早く詳しくなってほしいし、リテラシーも身に付けてほしい。このジレンマに苦悶しているのだ。