モバイル端末の多様化とクラウドサービスの発達は、人々を時間と場所から解放しつつある。企業にとっても人材確保や事業継続の面で、大きなメリットをもたらした。いまや、(1)会社でやりかけの仕事を自宅で続けること(あるいはその逆)、(2)TPOに応じてスマートフォンやタブレット端末、パソコンなどを使い分けること(マルチデバイス)、そして(3)クラウド上での情報共有は珍しくなくなった。

 半面、オフラインでは手も足も出せないという現状がある。例えば、都市であっても電波が届かないエリアはいくらでもある。地下鉄では電車の走行中に電波はまず届かない。最近ではスマートフォンの普及でシステムがパンクし、メールアドレスが他人のものに置き換わってしまうという事件まで起こっている(関連記事:spモード障害、なぜ処理能力オーバーで「メールアドレスの置き換え」が起きたのか)。光回線やADSLなどのアクセス回線でも、障害や停電、保守作業でオフラインになることが珍しくない。

図1●オフラインでメールを読み書きできるようにするChrome用アプリケーション「オフラインGmail」
図1●オフラインでメールを読み書きできるようにするChrome用アプリケーション「オフラインGmail」
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 そこでGmailのようなWebベースのシステムでも、オフライン時にはローカルストレージ(HTML5の機能)でメールを読み書きし、オンラインになったときにクラウド上のメールボックスと同期するといった仕組みが重宝されるようになってきた(図1)。

 また、Dropboxのようなオンラインストレージを介して、WindowsマシンやMacintosh、Linuxマシン、iPhoneやiPad、Android端末、BlackBerryなどの多種多様な端末のフォルダ内容がすべて自動的に同期するというサービスが相次ぎ登場している。

 いつどこにいても、どの端末を使っても、やりかけの仕事を継続できる。そんな時代が本当に到来しつつある。

そろそろ「Gmail」へ移行するかも

 近ごろ社内メールがGmailアドレスから届くことが多くなった。返信先は社内アドレスになっているのだが、Gmailサービスが代理で送信している。社内メールサーバーの受信メールをGmailへ転送させる一方、送信や返信はGmailで行うという使い方をしているのである。この方法は何かと便利なのだが、一つ問題がある。受信側のメーラー(Outlookなど)がスパムと判断して迷惑メールフォルダに隔離してしまいがちということだ。この場合、受信者が迷惑メールフォルダをチェックし忘れると、仕事上の行き違いが起こる。社外へメールを送った場合も、同様の問題が起こり得る。

 にもかかわらず、Gmailをメインに使う者が増えているのは、ひとえに便利だからである。会社でやりかけのメール処理を自宅で続行できるし、使用する端末も選ばない。記者という仕事は社内外からひっきりなしにメールが届く。プレスリリースやメルマガ、情報共有と称するノイズなどに交じって、やっかいな依頼や、すぐに処理しなければならない用件などが到着する。これらを選別し、優先順位をつけて処理するにはけっこう時間がかかるのだ。

 会社が標準と定めているメールシステムもWebメール機能を備えている。ところが、この使い勝手は非常に悪く、操作ミスを起こしやすい。加えてメールボックス容量にきつい制限がある。

 では、筆者はどうしているか。Gmailは使わず、会社も自宅もMicrosoft Outlookである。自宅からはVPN経由でPOP3を使って社内メールサーバーにアクセスする。IMAPはサポートされていない。なので会社でやったメール処理の続きを自宅でするには、もう一度その時点までメールをフォルダに選り分けながらたどり着くしかない。つまり、二度手間をかけているのである。

 Gmailを使わない理由は二つ。前述のスパム扱いされる危険性と、Webブラウザの使い勝手である。特に後者の理由が大きい。長年Outlookを使い込んできたので、メールを各フォルダにドラッグ&ドロップで移動できないWeb画面にはなかなかなじめない。

 ちなみに会社がGoogle Apps for Businessという法人契約を結んでいれば、Google Apps Sync for Microsoft Outlookという便利なアドオンソフトを利用できる。これを使えば、Outlookファイル中のメール、連絡先、予定、メモのそれぞれをGoogleのオンラインストレージと同期できる。ファイアウォール越えが可能なので、会社からも自宅からもOutlookでアクセスできる。ただし、実際に使ったことがないので、どこまで実用になるかは分からない。

 いずれにせよ、操作の慣れの問題であり、手作業での同期にガマンできなくなったらOutlookを捨てるかもしれない。2011年秋のリニューアルでGmailのユーザーインタフェースもずいぶんスマートになった。Chromeブラウザで使うなら、添付ファイルのドラッグ&ドロップも可能である。iPhoneやiPadではメールだけでなくカレンダーとメモも同期する。いっこうに国内発売されないが、Chromebookという手軽でバッテリー駆動時間が長い端末もある。