2011年10月に住商情報システム(SCS)とCSKが合併して誕生したSCSK。2014年度に売上高3000億円、営業利益250億~300億円を目指して船出した。同社の中井戸信英社長は「ある程度の収益規模がなければ、いろんなことにトライできない」とし、“売上高3000億円”がIT業界で生き残り、成長する条件の一つと考えている。

 両社の従来計画を単純合計すると、2011年度は売上高2760億円、営業利益150億円になる。売上高目標の達成はそう難しくなさそうだが、営業利益を2倍近く伸ばすのは容易でない。

増益の鍵は、顧客に対するクロスセールス

 まずは業務の効率化を徹底的に推し進めるという。福永哲弥取締役は「リストラは検討していないが、能力に見合った人員の再配置をする」とし、新卒採用の抑制で14年度までに500人から1000人の自然減などで総人件費を35億円削減する。加えて、ハードやソフトの調達・購買機能の強化やオフィス統合などで、同じく14年度までに経費を25億円減らす。これら施策で60億円の削減を見込めるので、目標達成にはあと40億円超の増益がいる計算になる。

 その策はいつかあるという。一つは、システム開発の生産性と品質の向上を図ること。特に開発の標準化、業務委託の効率化に向けて、開発テスト環境のクラウド化を進める。同時に、オフショアを含めた国内外の開発拠点、委託先の整理・統合を実施する。国内10カ所、6万平方メートルの規模になったデータセンターをネットワークでつなぐ計画もある。

 もう一つは、旧SCS、旧CSKのそれぞれの顧客に対するクロスセールスを展開すること。重複顧客は20%ほどしかいないので、SCSKになって増えた商品を売り込めるチャンスは十分にあると読む。例えばSAPのERP案件なら、SCSはシステム開発、CSKは保守・運用を手掛けてきたので、SCSの顧客に保守・運用を、CSKの顧客にシステム開発をそれぞれ提案できる。また、SCSは都市型、CSKは都市近郊+関西型と顧客層も異なる。「クロスセールスがどこまで成功するか」が目標達成の大きなカギを握ると中井戸社長は考えている。

ビジネスモデル転換の試金石は「プロアクティブ」

 こうした施策で利益を確保し、「システム開発の請負からサービス業へ」(中井戸社長)とビジネスモデルの転換を進める。SCSKは多くのITサービス会社と同様に、「クラウド」や「グローバル」「サービス」などを成長のキーワードに挙げている。

 果たしてビジネスモデルの転換が進むかどうか。それを占う材料の一つとして、自社製ERPソフト「プロアクティブ」のビジネスに注目している。

 プロアクティブの売上高は60億円が見えてきたが、収益に貢献するには至っていないのが実情だ。そのプロアクティブから、より多くのリターンを得るには、より多くの投資が必要になる。さらに、数億、数十億円といった大きな収益を生む事業に育てるには、ライセンス販売やシステムインテグレーション事業以外の新しい展開が求められるだろう。それを実行できた時、SCSKが新しいビジネスモデルを構築して成長軌道に乗せた時とみる。